映画の思い出といえばもうひとつ、女房との初めての映画デートがあるね。そのときに一緒に観たのは三船敏郎さん主演の任侠映画『制覇』。初めての映画デートで任侠ものを観るんだよ。しかも、女房が観たいといった映画だからな! うちの女房も大したもんだ(笑)。

 相撲時代のもうひとつの楽しみがラジオだ。相撲に入って初めて自分の個室が与えられたときに、真っ先に買ったのがラジオで、相撲時代はずーっとラジオを聴いていたよ。テレビは兄弟子がチャンネル権を持ってるから、あんまり面白くなくってね。よくラジオで吉田拓郎さんの番組を聴いていて、拓郎さんの曲が流れると兄弟子に「なんだ、その女々しい歌は!」なんて言われたもんだよ(苦笑)。

 ラジオはローカル局が好きで、FM世田谷やFM川崎、大阪のローカル局もよく聴いたもんだ。高速道路を走っているときでも、世田谷を通るときは、ちょっとでもいいから聴きたくてカーラジオをFM世田谷に合わせるんだけど、5分間くらいで通過しちゃってほとんど聴けない(笑)。今でもローカル局の生放送を聴くと、巡業で行った大阪で笑福亭鶴瓶さんの深夜ラジオを聴いていたこととか、若い頃のことを思い出すね。

 プロレスに転向してアメリカ修行のときもラジオが友達だったね。渡米するたびにラジオを新調して、なにかあるとラジオで気を紛らわしたり、滞在先のモーテルでカントリーミュージックを聴いたりしたもんだ。カントリーミュージックは曲の途中でよく「ヒーハー!」って掛け声が入るじゃない。明るい曲が多いからテンションが上がるし、現地のレスラーが好きだから俺も影響されたんだ。俺がいたテリトリーはテキサスやノースカロライナといった南部だったから、ラジオでも流れるのもカントリーミュージックが多くて。今でも、夜中にテレビ番組の通販で「カントリミュージック100曲セット」というのを観ると、思わず買いそうになる俺がいるね。

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生涯大切にしているエルヴィス・プレスリーの言葉