(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
『新「名医」の最新治療2020』より
『新「名医」の最新治療2020』より

 脳や神経など、頭蓋内の組織にできる腫瘍を総称して脳腫瘍というが、髄膜種は脳を覆う膜にできる良性の腫瘍をさす。手術で全て取れれば完治する可能性が高いが、まれに再発を繰り返し死に至るものもあるという。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、髄膜種の症状や治療法について、専門医に取材した。

【データ】脳腫瘍にかかりやすい性別や年代は?

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髄膜腫は脳を覆う膜にできる良性の腫瘍で、原発性脳腫瘍の中では最も患者数が多く、全体の約40%を占める。年代的には中高年に多く、特に40~50代の女性に多いのが特徴だ。また高齢化に伴い、年をとってから見つかるケースが増え、年齢層も上がっている。

 髄膜腫は直接脳にできる悪性脳腫瘍とは異なり、手術ですべて取れれば再発もほとんどなく、治癒する可能性が高いものが多い。悪性度でいうとグレード1だ。しかし、ほぼすべてが良性の下垂体腺腫や神経鞘腫などと比べ、一部グレード2~3の悪性のものがある。また腫瘍ができた場所によっては、手術に高度な技術や経験を要するため、脳腫瘍を専門とする医師や病院を受診し、きちんとした診断を受けて治療に臨むことが第一だ。

 髄膜とは脳を包んでいる膜の層で、脳に近いほうから軟膜、くも膜、硬膜という3層構造になっている。髄膜腫は一番外側の硬膜から発生し、大きくなるにつれて内側の脳を圧迫したり圧迫された脳がむくんだりして、できた部位によりさまざまな症状を引き起こす。

 また硬膜は、頭蓋底と呼ばれる脳の下側にも回り込んでいる。頭蓋底には脳の最も重要な機能を持つ脳幹があり、脳幹からは12対の脳神経が出ている。そのため、腫瘍ができた場所によっては神経を障害し、視野が欠けたり聴力が低下するなどの症状が出ることもある。

 横浜市立大学市民総合医療センターの坂田勝巳医師は、次のように話す。

「髄膜腫は硬膜がある場所であれば、脳の表面でも頭蓋底でも脊髄の外でも、どこにでもできる可能性があります。髄膜腫には腫瘍ができる場所によって15ほどの種類があり、それぞれ名前も異なりますが、最もよく見られるのは頭蓋骨の丸みに沿った部分(円蓋部)にできる円蓋部髄膜腫です」

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