(3)インプラント
 歯根に代わる金属の人工歯根、「インプラント体」を歯槽骨に埋め込み、これを土台にして人工の歯を取り付ける治療です。人工歯根に多く使われるのはチタンという金属などで、このチタンが骨とほぼ結合状態となる性質を利用して固定します。

 インプラントのメリットはなんといっても自分の歯と同じような感覚で噛めること。見た目も天然の歯とほとんど同じです。ブリッジのように周囲の歯を削らずにすみ、1本の歯を失った場合からすべての歯を失った場合まで治療が可能です。

 デメリットはインプラントを埋め込むために外科手術が必要なことです。手術である以上、合併症のリスクがともなうため、持病がある人は適応外になることもあります。また、顎の骨に近い太い血管や神経が傷つけられた場合、異常出血や神経損傷による麻痺などが起こることがあり、経験豊富な歯科医師に治療をしてもらうことが大事でしょう。

 また、インプラントが歯槽骨に結合するまでは最低でも下顎で2~3カ月、上顎で4カ月程度かかります。歯周病が進み、インプラントを支える歯槽骨が少ない場合、適応外となってしまうこともあります(他の部位から骨を移植したり、骨を増やす手術を併用すれば、おこなえる場合もあります)。

 最近はインプラントの上部(人工の歯)を取り外し可能な入れ歯にした「インプラントオーバーデンチャー」があります。入れ歯のように清掃ができることなどから、高齢で歯周病のセルフ・ケアが十分にできない人などに向くといわれています。

*インプラントには健康保険が適用されず、全額自己負担です。医療機関によって異なりますが、1本あたり数十万円の治療費がかかります。

※『続・日本人はこうして歯を失っていく』より

≪著者紹介≫
日本歯周病学会
1958年設立の学術団体。会員総数は11,739名(2020年3月)。会員は大学の歯周病学関連の臨床・基礎講座および開業医、歯科衛生士が主である。厚労省の承認した専門医・認定医、認定歯科衛生士制度を設け、2004年度からはNPO法人として、より公益性の高い活動をめざしている。

日本臨床歯周病学会
1983年に「臨床歯周病談話会」としての発足。現在は、著名な歯周治療の臨床医をはじめ、大半の会員が臨床歯科医師、歯科衛生士からなるユニークな存在の学会。4,772名(2020年3月)の会員を擁し、学術研修会の開催や学会誌の発行、市民フォーラムの開催などの活動をおこない、アジアの臨床歯周病学をリードする。