(イラスト/渡辺裕子)
(イラスト/渡辺裕子)
(イラスト/渡辺裕子)
(イラスト/渡辺裕子)

 歯周病が進行してしまい、歯科医院で治療を始めたけれど、もう手遅れだった……。そんな場合、歯を抜かざるを得ません。抜歯すればそれで終わりというわけではなく、抜いた歯を補う治療が必要になります。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会は、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』を発刊しました。本書から、歯周病で歯を抜くケースとその後の3つの選択肢について抜粋して届けします。

【図】インプラントの構造とは?

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 歯周病の治療は近年大きく進歩し、できるだけ歯を抜かない治療が主流になっています。腫れや出血がひどく、多少、グラグラしていても、歯周病治療をきちんとおこなうと炎症は抑えられ、進行をストップできる可能性があります。

 一方、歯の多くが進行した歯周病になっている場合、1本だけ抜歯するとほかの歯が弱くなったり、歯肉が下がったりすることもあります。このような場合、歯を抜かずに徹底した歯周病治療をおこなって歯周病の進行を止める(つまり歯を抜かない)、という選択肢もあります。

 それでも中には抜歯がどうしても必要になることがあります。

 それは第一に、「ひどい歯周病でそのままにしておくと、隣り合う歯の歯槽骨も破壊される危険がある場合」です。

 せまってくる歯周病菌からからだを守るために、私たちのからだの防御機能が働いて、歯周ポケット内では戦いが起きます。その結果として、歯槽骨は自ら溶けることで逃げ、細菌との距離を保とうとしていると考えることもできます。このように進行した歯周病の歯を放置しておくと隣り合う健康な歯の歯槽骨も減っていく可能性があります。

 第二に、「歯周病の予防がうまくできず、再発を繰り返したり、炎症が長引いている場合」です。歯周病の炎症は全身の病気や不調をきたす原因になります。

 このほか次項で解説するように、歯を失った後にインプラント治療を考えている場合、歯槽骨が一定量、必要になるため、骨がなくならないうちに抜歯したほうがよい場合もあります。

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口の中全体のバランスを考えて抜くか残すか検討を