国際基督教大学ヘザー・モンゴメリ学修・教育センター副センター長は教養学部アーツ・サイエンス学科教授で、金融・ファイナンスが専門(写真提供/国際基督教大学)
国際基督教大学ヘザー・モンゴメリ学修・教育センター副センター長は教養学部アーツ・サイエンス学科教授で、金融・ファイナンスが専門(写真提供/国際基督教大学)

 AI(人工知能)はスマホの音声認識や画像認識に使われるなど、生活の中にも浸透している。政府は「AI人材」育成のための取り組みの一つとして、「AI×専門分野」のダブルメジャー(二重専攻)を掲げている。大学院や大学でも、専門分野と合わせてAIについて学べる場を提供する動きが広がり始めている。AERAムック「大学院・通信制大学2021」では、慶應義塾大学、国際基督教大学の取り組みを取材、その一部を抜粋して紹介する。

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 慶應義塾大学は19年度から始めた「AI・高度プログラミングコンソーシアム」で、知識がある学生が学生に教えるというユニークな取り組みを始めた。全学部生と大学院生が参加できる「AIの学びの場」となっている。

 コンソーシアム代表の伊藤公平教授は「学生たちの関心は驚くほど高く、AIが使えないと社会に出たときにやっていけないという危機感があります。そのため、卒業単位にならなくても一生懸命に取り組んでいます」と語る。

 19年度は教室に限りがあり、多くの希望者の中から人数を絞り513人が参加。七つの学部の1、2年生が通う日吉キャンパスで基礎編、その近くの理工学部がある矢上キャンパスで上級編の講習会が行われた。講師と数人のTA(ティーチング・アシスタント)は、ほとんどがAIやプログラミングに詳しい学生だ。講師の発言をTAが訂正したり、前回休んだ学生を個別にTAが補習したりと、和気あいあいとした雰囲気の中で進められた。

 20年度前期はオンライン受講で、講習会を録画して見たいときに見られるオンデマンドと、決まった時間に参加して共同作業をするリアルタイムの二本立てとした。参加者は一気に2200人に増え、大学院生も多い。

 たとえば「AI医療入門」の講習会では、最先端の状況を海外の専門家がリモート講義する。春学期はプログラミングと医療画像処理の基本を学び、秋学期には実際にAIを活用した画像処理に取り組む予定だ。ほかにもウェブから欲しい情報を自動収集するプログラムを作る「スクレイピング入門」、ウェブアプリの開発など多様な講習会が開かれている。

「グラフなどの解析をパソコン上で地道に行う大学院生もいますが、簡単なプログラムを組むとそれが自動化できます。プログラミングを習得し、さらにAIソフトウェアをワードやエクセルのように使いこなせるようになれば、AIの限界も分かるので、自分でものごとを考えたり判断することができます」

 このコンソーシアムのウェブサイトでは、プログラミングの初心者でも取り組める課題が出され、優秀者への表彰が行われる。上級者向けには、世界トップレベルの学生が競い合う大学対抗プログラミングコンテストに参加する競技者を育てる勉強会がある。

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