16年11月13日の侍ジャパン強化試合のオランダ戦(東京ドーム)、2対8の7回に代打で登場した大谷は、2ボールからフロラヌスの3球目、内角高めを思いきり振り抜くと、高い放物線を描いた打球が右翼上空へ。「飛距離は十分かな。あとは切れるかどうか」と本人も本塁打を確信したが、直後、ボールは忽然と消えてしまった。

 観客は皆驚愕の表情で天井を眺め、審判もすぐに判定を下すことができない。「見えてました。入ったところはインフィールド。おそらく(特別ルールで)二塁打だと思った」大谷は、一応ダイヤモンドを1周して生還したものの、天井からボールが落ちてこなかったため、二塁打となった。

 前出の松井が記録して以来、14年ぶりのボール消失の認定二塁打は、アメリカの複数のメディアでも動画付きで紹介され、「MLB外で最高の野球選手」の賛辞を受けた。

 前年5月19日の楽天戦(koboスタ宮城)でも、外角高めスライダーにタイミングを崩されながら、ほぼ片手一本でバックスクリーンにぶち込む驚異のパワーを見せつけていた大谷は、今では「MLB」内においても最高の野球選手になりつつある。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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