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成功体験の多い人ほど「ない答え」を求めてしまう 医療では弱点に?

連載「現役皮膚科医がつづる “患者さんと一緒に考えたいこと、伝えたいこと”」

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大塚篤司dot.#病院
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 医療の現場では答えが出ない場面に多く遭遇します。きっとどこかに正しい解決策があると考えることは、人生において大切な考え方となりますが、医療ではときに弱点になりえます。京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師は、答えがない状況を耐え抜く力について語ります。

*   *  *
 ネガティブ・ケイパビリティーという言葉を知っていますか?

「答えが出ないことを耐え抜く力」を意味します。

 この言葉はイギリス・ロマン主義の詩人ジョン・キーツが初めて書き記した概念といわれています。その後、イギリスの精神科医ウィルフレッド・R・ビオンによって、精神医学の分野でも使われるようになりました。

 さて、私があたかもネガティブ・ケイパビリティーの専門家のように説明しましたが、お恥ずかしいことについ最近知った言葉です。

 きっかけは『だから、もう眠らせてほしい』(晶文社)の著者でもあり、川崎市立井田病院の緩和ケア医である西智弘先生がWEB講演会で紹介してくれたことに始まります。

 西先生は緩和ケア医の立場として、ネガティブ・ケイパビリティーの重要性を伝えています。

 いろいろな場面で西先生も語っておられますが、医療の現場では答えが出ない場面に多く遭遇します。

 例えば末期がんの告知。

 人間誰しもいつかは死を迎えるものですが、それが決して今ではないと信じながら生きています。どこか遠く未来にある出来事として死は存在します。心では準備をしていても、いざ現実のものとして突きつけられると「今ではない」と感じるものです。

 現代医学でも治せない病気は多く存在します。

 そのことを受け入れることはとても難しいことです。

 きっと世界のどこかに治す方法があるはずだ。

 人生で成功体験を多く積み重ねてきた人ほど「ない答え」を求めてしまうように思います。

 正しい解決策の存在を信じ、それを探し出す力。

 これがネガティブ・ケイパビリティーの反対の概念であるポジティブ・ケイパビリティーです。


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