「『配置転換』することが復活することには直結しない」

 抑え投手が打たれると、『配置転換』の話が浮上してくる。小林は自らの経験から、実績ある抑え投手の場合、あまり意味がないと語る。

「同じブルペンでも、中継ぎと抑えはまったく別物。気分転換にはなるかもしれないが、それ以上でも以下でもない。中継ぎは先発、抑えという前後の投手を考えながら投げないといけない。極端に言えば、チームへの献身性や忠誠心が求められる。投げる回など、タイミングも試合によってマチマチ。準備も含めて本当にタフな職場。抑えは極端に言うと自分勝手で良い。投げるのは最終回。どんなに走者を出そうが、失点しようが、勝利をつかめば良い。自分自身の投球を突き詰め結果を出すことが最も大事なこと。考え方がかなり違うポジション」

 中継ぎで投げることによって、抑え時代に備えていた闘争心のようなものが薄れたと感じたこともあった。

「インディアンス時代、初めての米国挑戦ですべてを受け入れようと思った。抑えにこだわらず任されたポジションで投げてやろう、と。チームの勝利のためになんでもやる。バランサーというか、抑えをやっていた時の気持ちが持てなかった。以前の闘争心が出なくなり、パフォーマンスも満足できなかった。国内復帰した現役晩年に、もう1度抑えのポジションを奪い取ろう、とやった時があった。結果的には叶わなかったが、投球内容などは自分自身で納得できるものに戻った」

 抑えとして数々の実績を残し、修羅場をくぐってきた投手にしかわからない気持ちなのだろう。

 日米通算234セーブ、530試合登板した中では様々なことがあった。『コバマサ劇場』とファンの間で呼ばれたこともあるように、ピンチを招くことも多々あった。

「良い時ばかりじゃない。大事なのは打たれた時、その次の日にどう振る舞うか。いつまでも落ち込んでいるのか。必要以上にはしゃいでいるのか。淡々といつも通りなのか。みんなが見ているから、そこだけは大事にしてきた。抑え投手は試合の最後を任せる投手。ベンチにいる誰もが、『今日は大丈夫だ』と信じて送り出したいはず。いつもと変わらず自信満々だと思わせないといけない」

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「藤川も山崎も抑えで投げて欲しい…」