古代中国人は「乱れ髪ってどのぐらいあるのかな」と考えた?(イラスト/もりいくすお)
古代中国人は「乱れ髪ってどのぐらいあるのかな」と考えた?(イラスト/もりいくすお)

 漢字には、現在の意味からは想像できないような意外な成り立ちのものが数多くあります。そこで、漢字研究の大家であった白川静博士の「白川文字学」に基づいて、古代文字と比較しながら成り立ちを見ていきましょう。

*  *  *

■「算」

~竹製の算木を使って数えることを表す

 「竹」と「具」を組み合わせた字です。「具」は青銅器の鼎(かなえ)を両手で持つ形で、「そなえる」ことや器具を表します。「竹」と合わせて、竹でできた「算木(さんぎ)」という計算用の器具を使って数えることを表し、「かぞえる」の意味になりました。また「計算する」意味から転じて、「はかりごと」の意味にもなりました。

■「奇」

~神に祈りを実現させる曲刀がルーツ

 取っ手のついた大きな曲刀を表す「大」と「丁」を組み合わせた字と、神への祈りの言葉をいれる器の「口」の組み合わせです。神に祈りを実現するよう、曲刀で責めることを表し、そのようなことは普通ではないので「あやしい」の意味になりました。「奇数」は英語で「odd number」といい、「odd」は「奇妙な」という意味なので「奇」が用いられました。

■「偶」

~同じような形の「ひとかた」を表す

 右側の「禺(ぐ)」は、うずくまるような姿の獣の形が元になっています。「にんべん」と合わせて、同じような形の「ひとかた」を表します。呪詛(じゅそ)の道具に使われたほか、副葬品として二つずつ並べられることが多かったことから「偶数」のように用いられます。

■「均」

~銅の塊が「同じ」量から漢字の意味が

「二」の部分は、同じ量を鋳込んだ銅の塊を表します。同じ量なので「均」は「ひとしい、ひとしくする」の意味になりました。

■「数」

 ~高く巻き上げた髪を打って崩し乱す

 元の字は「數」です。「婁(ろう)」は髪を高く巻き上げた女性で、「攴(ぼく/攵)」は手や棒などで打つことを表します。したがって「數」はもともと、高く巻き上げた女子の髪を打って崩し乱すことで、そこから「せめる」の意味になりました。また、髪がばらばらになる様子から「かず、かぞえる」の意味にもなりました。

※漢字の成り立ちには諸説あります。
※漢字エンタメ誌『みんなの漢字5月号』から抜粋

監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)