ただし、縫合操作を簡略化しているという構造上、慎重な装着が重要だという。

 一方の機械弁も、現在、血栓がつきにくい弁が開発されており、臨床現場で使われながら、その有効性が検証されている。

「この機械弁によりワルファリンを服用せずに済むことになるかもしれません。現在、国際的な試験でその有効性が検証されています」(新浪医師)

 そして、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症いずれの治療においても、カテーテルによる内科的治療も始まっている。手術と比較して低侵襲な治療として注目されている。現在は手術不能な高齢者や他の病気を有する患者に対して適応されているが、今後、適応が拡大されていく可能性がある。

「今後は手術のアプローチ方法、人工弁の選択、カテーテル治療を使い分けることで、患者さんのライフプランに応じた治療ができるようになっていきます。さらに、再手術が必要になったときも負担の少ない治療の組み合わせと順番を考慮して治療ができるようになるでしょう」(荒井医師)

 なお、心臓弁膜症の治療も含む心臓手術や心カテーテル治療に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。

手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・伊波達也)

≪取材協力≫
東京医科歯科大学病院 心臓血管外科教授 荒井裕国医師
東京女子医科大学病院 心臓血管外科教授 新浪博士医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より