しかし、そうした感覚は短時間で爆発的に広がるわけではない。時間をかけて、少しずつ、さまざまな「異様」さが共有され、解消されていく。私が過去2回経験したバブル崩壊も、瞬時ではなく徐々に変化していった。

 ということは、「徐々に」の初期段階であれば、以前の価格に近い水準での売却も可能性になるはずだ。だからこそ「今すぐ売りなさい」なのだ。

 では、今すぐ売るためには何をすべきなのか。

 駅前にある大手の仲介業者に駆け込んで売却を依頼することは、私はお勧めしない。むしろ、売却の好機を逃してしまうことになりかねないからだ。

 大手仲介業者は組織が大きいため、担当者はより大きな利益を上げることが求められる。中古マンションの売却を仲介した場合、業者が得られる手数料は成約価格の3%プラス6万円と消費税、と法律で定められている。これは売り主と買い手のそれぞれから得られる。つまり、売り主から依頼された業者が買い手を自分で見つければ、双方から3%プラス6万円の手数料が手に入る。これを業界用語で「両手」という。

 この「両手」を成立させるために、わざと他の仲介業者に物件を紹介しなかったり、不当に価格を下げることを売り主に迫ったりすることは業界で横行している。信じられないかもしれないが、これは不動産業界では常識である。

 もし何も知らずにそうした業者に仲介を依頼すれば、業者の言われるがままに相場よりも安い価格で売却させられることになる。

 そうならないために、上手な物件売却の具体策を挙げていこう。

 まずは物件の「本当の相場」を知ることだ。これは、簡単なようで意外と難しい。

 ネットでは「○社同時査定」のように、物件の相場価格を算出してくれるサイトが多くある。これを利用するのも一つの方法ではあるが、お勧めはできない。「デメリット」の方が大きいからだ。

 まず、業者側に詳細な個人情報を取られる。そのため、利用した後は仲介業者からしつこく電話がかかってくる。その対応はかなり厄介で、人によってはノイローゼになる。さらに、仲介業者は何よりも「専任媒介契約」を取りたがる。専任とは、そのマンションはその業者を通してしか売却できない契約のこと。それさえ結んでしまえば、業者は最低限「片手」の手数料は得られる。それゆえ、市場相場よりも高く査定額を出してくる業者も多い。結局、その値段では売れないのだから参考にもならない。

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「5%」はあえて捨てる