シングルマザーの女友だちは、「大切なことが、昼の会議ではなく、夜の街で男たちで決まる」と嘆いていた。50年前の話ではなく、少し前、のことだ。マスコミ勤務の男性の友人は、「いまだに地方に行くと接待で風俗の誘いを受ける」と言っているが、これも100年前の話ではなく、今、のことだ。先日、若い力士が女性に接待される店に仲間と遊びに行ったと報道され休場したが、力士、というより20代の男性でも今はキャバクラに行く時代なのだということを突きつけられた。

 もう一つのもやもやは、接待を伴う飲食を非難する一方で、“性的サービスを伴う接待”である性産業に関しては、ほぼ放置ということだ。海外の報道をみていると、オランダやドイツなど、セックス・トレードを合法化している国は、政府が営業を止めている。飲食店やマッサージ店が営業を開始している中、なぜ性産業は営業できないのか、コロナを機につぶそうとしているのではないか?という議論が今、起き始めている。

 日本の場合は、“性的サービスを伴う”業種で店舗を持たないデリヘルなどは、緊急事態宣言中も営業を続けていた。デリヘルのホームページをみると「清楚な現役女子大生、お貸しします」という広告で、18歳、19歳、という年齢を表示した女性たちが「貸し出され」「売られている」のが分かる。男性の需要には超寛大な一方、働く女性を守る法律はない。自己責任でコロナ対策し、自己責任で性感染症も、妊娠も、さまざまな危険から身を守らなければならない。

 性産業に関しては、ジェンダー平等が国策になっている北欧諸国にならい、性産業の需要自体を少なくするための取り組みが主流になっている。それは日本の現実とは真逆の方向である。

「夜の街」という言葉から見えない現実がある。「夜の街」という言葉からすら、はじかれる女性たちがいる。自分なりのもやもやは整理はできたが、さらにもやもやは深まる。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

著者プロフィールを見る
北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

北原みのりの記事一覧はこちら