AERAムック「大学院・通信制大学2021」から
AERAムック「大学院・通信制大学2021」から
グループワークのメンバーで、ケーススタディをもとに議論。ホワイトボード横の女性が金井さん。付箋を使って、アイデアを書き出す(写真提供/金井絵理さん)
グループワークのメンバーで、ケーススタディをもとに議論。ホワイトボード横の女性が金井さん。付箋を使って、アイデアを書き出す(写真提供/金井絵理さん)

 仕事をしながら、退社後や土曜日に大学院へ通う社会人が増えている。なかでも人気なのがMBAだ。「人材マネジメント」「マーケティング」「ファイナンス」など企業経営全般について学ぶ。MBAは資格ではなく、修士過程を修了すると学位として与えられる。AERAムック「大学院・通信制大学2021」では、働きながら大学院に通う社会人を取材した。

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 社会人大学院入試の講座を開設している河合塾KALS新宿本校・教務企画課の石田康智さんは、最近の傾向について次のように話す。

「以前に比べてMBAを目指す社会人が増えています。30代半ばが多く、ある程度自分の仕事が出来るようになったタイミングで今後のキャリア開発のために通い始める人が多いようです」

 3年程度の実務を経験していることを入学の条件に課している大学が多く、入試は「研究計画」「将来計画」といった書類を事前に提出したうえで、面接や小論文が課せられる。

「大学院は、自分が何を学びたいのか目的を持って進むところです。最初は動機が曖昧でも、最終的には明確にすることが大切。キャリアを見直したうえで、将来の展望を見据えた研究計画・キャリアビジョンを作成しないと選考には通りません」(石田さん)

 大学院を選ぶ時にはネットやパンフレットだけでなく、実際に足を運び、入試説明会や無料講座などに参加してみよう。大学院によっては公開討論会やパネルディスカッションを行っている所もある。学位はとれないが、MBAの短期コースを設けている大学院もあるので、試してから大学院に入学するという方法もある。

 金井絵理さん(39)は大学を卒業し、人材情報会社などで営業に従事。その後転職して人事部に配属されたことが、大学院へ通うきっかけになった。

「営業とは違う責任の重さを感じました。評価や処遇にかかわることは、社員の人生に関わること。私がスキル不足のまま仕事に取り組むことは許されない。きちんとした知識を付け、自分のスキルに自信を持った上で仕事に臨みたいと思いました」(金井さん)

 半年間河合塾KALSに通い、2016年4月に第一志望の早稲田大学大学院経営管理研究科へ進学。いろいろ調べ、人材組織を体系的に勉強できることが選択の決め手になったという。

「入試は秋と冬の2回あり、秋の選考で合格。時間があったので、忙しくなることを見込み、できる仕事は先取りして片付け身軽にしておきました」

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