スクールロイヤー制度も自治体によって温度差がある。千葉県流山市のように、常勤のスクールロイヤーを配置している自治体もあるが、多くはまだ制度を使い切れていないのが実情だ。

 大阪府教育庁は、大阪弁護士会とともに13年からスクールロイヤー制度を発足させた。制度を導入した経緯を、大阪府教育庁小中学校課の芳野和宏首席指導主事は次のように話す。

「従来から、学校の教育課題に対し、弁護士やスクールソーシャルワーカーなどの専門家がチームを組んで、支援する体制をとっていました。いじめ防止対策推進法を契機に、スクールロイヤー制度を正式に立ち上げることにしました」

 大阪弁護士会には「子どもの権利委員会」という部会があり、そこに所属している教育問題に詳しい弁護士を、大阪府のスクールロイヤーとして委嘱している。

「いじめや保護者対応のほかに、学校事故の賠償や治療費、不登校の生徒にはどこまで関わっていいのかなど、法的な助言が必要な相談が寄せられています。弁護士が適切なアドバイスをおくることで、教員の負担も軽減されます。しかし、まだ弁護士への相談に対するハードルが高く、事態が深刻になってから相談される学校が多いです。深刻化を防ぐために、早くから相談してもらうことが今後の課題です」(芳野首席指導主事)

 大阪府と堺市で、スクールロイヤーとして活動している山口崇弁護士には、月に7~8件くらいの相談が寄せられている。気軽に声をかけてもらうために、学校で研修を開いて信頼関係を築いたり、相談の事例集などを作って配布したりしているという。

 山口弁護士は『子どものため』という視点を第一に掲げ、時には学校に厳しい助言をすることもあるという。

「学校から相談される内容は、いじめに関するものが多いですね。学校が間違った対応をしてしまうと、被害にあった子どもの保護者から『加害者の肩を持っている』などと非難されることになりかねません。いじめ防止対策推進法ができたからには、法に従って対応する必要があります。ただ、学校の先生は必ずしも法律に詳しいわけではなく、何がいじめにあたるのかという認識の違いもあります。被害者を保護するための法律なので、『いじめを受けた』という子どもがいれば、いじめと受けとめた上で調査することが基本です」(山口弁護士)

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