まず、服装。オンラインだとパーカーやTシャツでも良さそうな気がするが、商談であることに変わりない。ここはビジネスマナーを重んじて「ジャケットなどの羽織りものは必須」(野本さん)。

 オンライン上であいさつし、「オンライン名刺交換」をしたら、まずお相手の悩みを簡単に聞く。「なぜ、導入を検討しましたか」「いま、どんな検討段階ですか」。答えを聞いたら、二言目には必ずこう言う。

「ではこれから、30分から40分ほどいただけますか」

 どんな商談であれ、相手はどのくらい時間を取られるのかを心配している。対面だと1時間でも許容範囲に思えるが、野本さんいわく「オンラインで1時間を超えるとアウト」。長いと感じさせてしまうという。

「30分~40分でいい、とわかると、安心してお付き合いいただけます」

 商談の順番は、だいたい決まっている。アイスブレークに数分、お悩みのヒアリングに10分、デモンストレーションに10~20分、クロージングに10分程度。非対面の場合、売り込むべきは「自分」ではなく「商品やサービス」。サービスのデモンストレーションに時間を割くことで、導入後のイメージを具体化していく。

 オンライン商談について、相手はどう感じているのだろう。オンラインで問い合わせをする会社だけあって、大きな違和感はないようだが、どうも不得手な人もいるという。

「このサービスを利用することで、何を達成したいのか。それを言語化できないと、オンライン商談がしづらいように感じます」(野本さん)

オンライン商談 会議室からの参加は「本気」のサイン

 さて、商談のクローズ。野本さんが注視するのは、相手がどこから商談に参加しているか、だ。オンラインゆえ、自席から気軽に参加する人もいるが、相手が会議室をとっている場合は「本気のサイン」なのだとか。こちらも最後まで真剣に説明する。

 ちなみに野本さんは、自宅でオンライン商談をすることはほぼないという。会社の会議室やオンライン商談用のブースなど、周囲に余計なものが映り込まない場を選ぶ。

「背景にプライベートが見え隠れすると、商談しづらくなる。こちらも真剣かつ本気で参加すべきなんです」

 わずか40分の商談に集中力を注ぎ込む。これがオンライン商談の極意なのだ。

 野本さんが所属するSansan社によると、国内では年間30億枚もの名刺が交換されているという。これがオンラインになるとどうなるか。同社でブランドコミュニケーションを担う小池亮介さんはこう推察する。

「人と人が出会い、アイデアを交換することで、新しいイノベーションが生まれる。これが、地方と都心、遠隔地同士など、場所に関係なく生まれていきます」

 専門家会議の提唱を受け、同社は主に大規模法人を対象にしたクラウド名刺管理サービスにおいても、オンライン名刺交換機能を提供開始することを3月に発表、6月の提供開始前から約2000社から導入表明があったという。デジタル化によって、出会いの形はより多様になるはずだ。(文:カスタム出版部)