――勉強を教えるわけでもないのに、親が子どもの側にいるのにはどんな意味があるのでしょうか。

佐藤:「自ら考えて学ぶ」という作業は大変孤独なのです。その孤独の中で、一人で思考して初めて内容が自分のものになります。

 例えば、塾、学校、家庭教師の先生にわからない問題の解き方を教わると、子どもは「あー、なるほど」とその時には思いますが、実は理解した気になっているだけの場合が多いのです。誰かに解き方を教えてもらうだけでは、決して自分で答えを導けるようにはなりません。テストでいい点も取れませんし、受験で合格はできません。これが、塾に行って、さらに家庭教師の先生にも習っているのに成績が上がらない理由です。

 人からどれだけ解説を聞いても、自ら一人でやってみないと解けるようにならないのです。非常に大変なのですが、やはり一人で問題と向き合い、「何でこうなるのか」「どうやったら解けるか」を自分の頭で考えて、自ら答えを導き出す。その積み重ねでしか、学力は身につかないのです

 一人で問題と対峙して、自分の頭でああでもない、こうでもないと考える。そうして初めてやっと賢くなります。その過程が孤独でつらい作業なのです。ノートの中では孤独に頑張らざるを得ませんが、ノートの外側までも孤独にしては、子どもはノートの中の孤独に耐えられないのです。だから、子どもが勉強中は親はぜひ側にいてあげて、無言で応援してあげてほしいと思います。

 人間は誰でもそうですが、特に子どもはつらいことからすぐに逃げ出してしまいます。そうなると、今の時代、友だちと勉強を教えあう、わからないこと聞くという理由をつけてスマホで連絡を取り合ったり、SNSをのぞいでみたりします。すると、いつの間にか勉強とは関係ない「おしゃべり」に発展し、1時間も2時間も過ぎていた……なんてことになってしまうというのは最近のよくある親の悩みです。

 孤独に耐えて勉強しないと知識は身につかない、でも、子どもはつらいものから逃げがち。だから親が側で「見守る」必要があるのです。勉強から逃げた子どもを責めるのではなく、いつも寄り添う覚悟を持っていただきたいと思います。

―一日じゅう家にいるとどうしても、だらけがちです。「秩序」を保つ秘訣はあるのでしょうか。

佐藤:わが家の子どもたちは大学受験のとき、センター試験から東大の試験までの40日間を自宅で勉強しました。その経験からお話しすると、まず大人が時間を守ることが大事だと思いました。

 毎日のスケジュールで朝食を7時と決めたら、きっちり7時にさっとごはんを食卓に出して食べさせる。ここが重要なポイントで、7時5分でも7時10分でもだめなのです。

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