佐藤栞里(C)朝日新聞社
佐藤栞里(C)朝日新聞社

 芸人たちが体を張ってあの手この手で笑いを取ろうとする『有吉の壁』(日本テレビ系)が好調だ。この手の純粋なお笑い番組がゴールデンタイムでレギュラー放送されるのは最近では珍しい。それが視聴率の面でも話題性の面でもまずまずの結果を出しているというのは、お笑い界にとって明るいニュースである。

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 そんな『有吉の壁』に欠かせない存在となっているのが、MCの有吉弘行の隣でアシスタントを務めるモデルの佐藤栞里だ。ロケでは有吉と共に遊園地や学校などを歩き回り、そこで芸人たちの熱の入ったパフォーマンスを目にして無邪気に笑う。

 どちらかと言うと女性に敬遠されがちな泥臭い笑いも多い番組だが、佐藤は決してその空気を壊さない。でしゃばることもなければ過度に遠慮することもない。ちょうどいいたたずまいでいつも底抜けに明るい笑顔を見せている。

 7月20日放送の『しゃべくり007』(日本テレビ系)では佐藤がゲストとして出演していた。そこでは、番組の収録が終わるたびにノートに反省点をメモする真面目な一面が明かされていた。ロケの前には自らロケ現場を下見する「ロケハン」を行ったこともあるという。

 また、収録前には共演者の情報を徹底的にリサーチして、芸人ならどんなネタをやっているかということまで事前に確認する。

 しかし、それだけ裏で努力をしていると公言しても、佐藤にはどこか隙がある感じがする。悪い意味での計算高さがほとんど感じられない。昨今のバラエティ番組に出ている女性タレントの中でも珍しいタイプだ。

 最近の女性タレントのトレンドは「戦略性」と「わかってる感」である。テレビがどんどんタレントの素の部分を求めるようになってきたため「バラエティではこういうふうに考えて立ち回っています」みたいなことを誰もが堂々と言うようになった。

 戦略を立てて、それを実行する。結果が出なければ改善策を練る。そんなPDCAサイクルを回せる有能なビジネスパーソンのような人間でなければ、女性タレントとして生き残れない時代になっている。あれほど自由奔放に見えるフワちゃんですら、言葉の端々にテレビタレントとしての高い自意識が垣間見える。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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何かの能力があるより「ない」ことが佐藤栞里の強み