■注射回数が少なく体重減少効果も

「経口薬には7種類あり、1剤使って目標とする血糖値まで下げられなかったら、違う種類の経口薬をもう1剤加えます。こうして、多くの場合、3剤使っても効果が十分ではない場合に、インスリン療法の導入を検討します」(綿田医師)

 糖尿病の注射薬は、(1)インスリンそのものであるインスリン製剤、(2)血糖値が高いときだけインスリン分泌を促し、膵臓の負担が少ないGLP-1受容体作動薬、の二つに分けられる。

 インスリン製剤はさらに2種類があり、血糖値を下げる効果が24時間あるいはそれ以上続く持効型と、注射したときに集中的に効く超速効型がある。弘世医師はインスリン製剤の使い方を次のように紹介する。

「まず経口薬に、1日1回の持効型のインスリン製剤を加えます。早期に開始すれば半数ぐらいの患者さんで血糖コントロールは目標ラインまで改善します。コントロール不十分な場合は、食事に合わせて1日3回まで超速効型を加えます」

 これを負担に感じる患者もいるだろう。「いよいよインスリン注射か」という精神的なストレスや、自分で注射するという煩わしさ、軽減されているとはいえ注射針の痛みなど、かつてのインスリン療法はハードルが高かった。

 これに対してGLP-1受容体作動薬と呼ばれる注射薬は、1日1~2回、あるいは週1回の注射で血糖コントロールが可能になる。注射回数の少なさ以外にもメリットが二つある。

 一つ目は減量効果があることだ。インスリンは余ったエネルギーが中性脂肪に変わるのを促し、一般的にインスリン注射を始めると太りやすくなる。

 しかし、GLP-1受容体作動薬は血糖値を抑える効果は維持したうえで、体重はむしろ減る傾向がみられるという。

 主成分に、消化管の動きを抑えて、栄養の吸収を穏やかにする働きがあり、これが減量につながる一つの理由だ。

 二つ目は安全性だ。通常、インスリン製剤は現状の血糖値に関わらず血糖値を下げつづけるが、GLP-1受容体作動薬は、血糖値が高いときにだけ作用する。そのため低血糖を起こしにくいことも利点の一つとされている。

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