■ブドウ糖の排泄で血糖値を下げる薬も

 一方、インスリンの効きの悪さを改善する薬にはメトホルミン(ビグアナイド薬)やチアゾリジン薬がある。また、ブドウ糖の体内への吸収を遅らせるのがα-グルコシダーゼ阻害薬である。

 さらに、血液中に過剰になっているブドウ糖を尿と一緒に体外に排出させるのがSGLT2阻害薬である。エネルギー源であるブドウ糖を排出させることで、体重が減少する。その結果、肥満が解消され、インスリンの効きがよくなる、というしくみである。このため、SGLT2阻害薬は肥満の患者に使われることが多い。

 糖尿病は神経や眼、腎臓などの細い血管のほか、脳や心臓といった比較的大きな血管にも合併症が起こる。綿田医師はこれを踏まえ、SGLT2阻害薬について次のように期待する。

「血糖値が下がるだけでなく、脂質異常や高血圧の改善にも有効です。海外の研究ですが、SGLT2阻害薬を使うと、その後心筋梗塞や脳卒中が減ったという報告があります」

■下げすぎ注意! 経口薬の副作用

 こうした現状を踏まえ、綿田医師は薬物療法の変化を次のように見ている。

「薬剤が十分ではなかった時代には、患者さんが長く続けられないような無理な食事・運動療法もみられました。しかし、近年は血糖値がよくコントロールできる副作用の少ない薬剤が複数使えるようになっており、早めに薬物療法を始めるケースもあります」

 早めに薬物療法を加えれば、血糖コントロールが不十分な期間を短縮でき、合併症を予防しやすくなる。

 食事・運動療法を始めたものの、検査値が、目標値に達しないうちに下げ止まってしまった場合に薬物療法を加えるのが一般的である。投与のタイミングについて、弘世医師は「患者一人ひとりのモチベーションを測ることが大事」と語る。

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