以前、どういった人がネット上で誹謗中傷をしているのか知りたいと思い、いろいろと調べてみたことがある。その過程でひとつの番組を見つけた。その番組は男性芸人に対して、毎日SNSで誹謗中傷をする人に実際に会いに行って、話を聞くというものだった。相手は、いたって普通の主婦だった。番組スタッフから「誹謗中傷をする理由」を聞かれた主婦は、「自分の言葉で人の気持ちが動くことが気持ちいい。彼(男性芸人)のことが嫌いなわけではない」と答えた。意外かもしれないが、私は彼女の言い分を聞いて、すんなり納得できた。というのも、私に対して誹謗中傷をした人のアカウントを確認すると、彼らは私以外の人に対しても、日頃から誹謗中傷をしているのだ。彼らは誹謗中傷の対象が心から嫌いなわけではなく、誹謗中傷を通して、相手の感情が揺れる動く様を楽しんでいるのだ。つまり、相手は誰でもいいのだろう。そして、その対象が有名人であればあるほど、相手のリアクションが大きければ大きいほど、「誹謗中傷」は彼らにとって楽しい行為になる。たとえ、人が亡くなったとしてもだ。

 そういったことを踏まえると、やはり誹謗中傷に対して、真っ向から向き合うのは逆効果だと思う。相手にすればするほど、彼らを喜ばせるだけなのだ。もし、彼らの土俵に上がって、反撃をしてしまうと、暴力の無限ループに陥ってしまう。

 心から悔しいし、悲しい。けれど、それが現実だ。となると、一番効果的な反撃方法は訴訟などの社会的制裁と徹底的な無視だと思う。とはいえ訴訟には、着手金や長い時間など、多大な労力を要する。泣き寝入りをせざる得ない人もいるだろう。先日、私も自分が書いた記事に対して、あまりに曲解した書き込みを拡散されてしまったので、とっさに反論してしまったのだが、相手にするべきではなかった。反省している。ネット上でいきなり誹謗中傷をしてくる人は、突如、道端に現れた通り魔と同じようなものだ。そう自分に言い聞かせて、まずは自分の身を守り、周囲に助けを求めるべきだ。反撃してはいけない。

 最後に、誹謗中傷を直接的にした経験がない人にも伝えたいことがある。誰かが誹謗中傷を目的に書き込んだ虚偽の情報や明らかに客観性に欠ける意見などを真実だと思い込み、拡散をしてしまったら、意図せず誹謗中傷に加担してしまうことになりかねない。月並みな言い方だが、その情報が信用できるのかどうかを見極めてほしい。これらが誹謗中傷を行う人たちに対して、我々ができる対策だと思う。(コラムニスト・妹尾ユウカ)

◆妹尾ユウカ
せのお・ゆうか/1997年8月生まれ。一児の母。コラムニスト。ツイッタ-のフォロワー数は7万6千人(2020年7月現在)。