また石勝線の十三里と楓も信号場として生き残った廃止駅。十三里は追分駅起点13マイルの標識があったことが駅名となったユニークな例で、モスクワ起点距離がそのまま駅名となった例がシベリア鉄道にある。楓は2004年3月に信号場となったが、駅としての晩年は日曜日運休の普通列車が1日1往復きりという超閑散駅として知られていた。

 著名信号場としては、石北本線の常紋信号場(生田原~西留辺蘂)が挙げられるだろう。スイッチバックを持つ信号場で、古くは蒸気機関車撮影の名所として人気を集めたが、2017年3月に廃止。信号場に接する常紋トンネルは、建設時の過酷なタコ部屋労働などをめぐり幽霊の目撃談が伝わる。

 そのほか、とさでん交通伊野線にある市場前信号場(鴨部~曙橋東町)は道路上(併用軌道)にある珍しい例。1954年に開業したさいは停留所として設置されたものの、72年以降は信号場として運用されている。
  
 ざっと信号場のあれこれを覗いてみたが、このほかにもユニークな物件や興味深い歴史を持つも多く、探ってゆくとまた新たな発見と出会えるかもしれない。旅先の車窓や地図で、そんな隠れた停車場に注目してみてはいかがだろうか。(文・植村 誠)

植村 誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。