部屋に飾られた甲子園の土(写真:森田裕貴さん提供)
部屋に飾られた甲子園の土(写真:森田裕貴さん提供)
首里高校にある甲子園出場記念碑には、甲子園の「小石」がはめ込まれている(c)朝日新聞社
首里高校にある甲子園出場記念碑には、甲子園の「小石」がはめ込まれている(c)朝日新聞社

 プロ野球阪神タイガースが阪神甲子園球場とともに、全国の高校3年生の球児に“甲子園の土”を入れたキーホルダーを贈ると発表したのは6月8日のこと。新型コロナウイルスの感染拡大により、夏の「全国高校野球選手権大会」の地方大会と全国大会が中止となったことを受け、矢野燿大監督を始めチーム内から「高校球児のためにできることはないか」という声があがり、実現したという。キーホルダーは8月下旬ごろから、対象となる各校に直接配送される予定だ。

【写真】土を持ち帰れなかった沖縄の首里… 代わりの小石はいまも記念碑にはめ込まれている

 今回の阪神の取り組みに対しては、「よいアイディアだ」「私も欲しい」と好意的な意見が大半だが、一部では、「土は甲子園に出場したことの証であって、土だけもらっても喜べない人もいるのでは」という声もある。2ちゃんねるの創設者であるひろゆき(43)は先月、TBSの情報番組「グッとラック!」に出演した際、「そんな土もらってうれしいのかな?」と疑問を投げかけていた。

 甲子園の名物として定着している「土拾い」。そのルーツとされる1人が、「打撃の神様」と呼ばれ読売ジャイアンツで活躍した川上哲治だ。1937年夏の甲子園に本工の選手として出場し、土を持ち帰ったとされる。これが最初の土拾いではないか(諸説あり)と言われている。

 それだけ土拾いには長い歴史があるわけだが、球児たちはどのように土を持ち帰り、その後どうしているのだろうか。

 2009年夏の甲子園に横浜隼人(神奈川県)の中堅手として出場した與那覇(よなは)明さん(28)は「お世話になった方々に配りました」と話す。

「甲子園で敗れたあと、学校に帰ってから全員が拾った土を一つにまとめました。それを3年生全員に均等に振り分けて、500ミリリットルのペットボトル1本分の土をもらいました。親戚やお世話になった方々に感謝の気持ちとして配り、自分の手元に残っているのはごくわずか。母校の中学では、私の土を飾ってくれています」

 今回の取材では十数人の甲子園出場経験者に話を聞いた。與那覇さんと同じように、周囲に土を配るというのが、最も多いケースだった。

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下級生は土拾いを許されない?