まずは、おっぱいトラブル。まだ授乳をしていたこともあり、定期的に搾乳しないと胸が張って痛くなってくる。私は教習所のトイレで搾乳していたのだが、一度乳腺炎になり、数日間教習所を休まざるを得なくなった。キャンセル料は1コマ4000円……一気に2万円が飛んだ。

 次は、子どもの発熱。ちょうど季節の変わり目ということもあり、寒暖差が激しく、息子は度々体調を崩していた。鼻水がおさまるまで授業の予定を入れずに待ったこともある。「短期間で、せっかく予定を組んだのに……」。そう思ったこともあったが、大切なわが子のためだと思い、自分の中で消化した。

 その後、仮免前の効果測定で10回も不合格となるという“痛い”体験もした。言い訳させてもらうなら、心身共に疲弊していたこともあり、久しぶりの勉強は全然頭に入らなかったのだ。不合格となるたびに積み重なる保育料は、本当の意味で痛かった。

 そんな紆余曲折あった教習所生活も、2カ月半で無事卒業することができた。トータルでかかった費用は約40万円。子育てをしながらの免許取得は、肉体的、金銭的に想像以上にハードでヘトヘトになった。

 もちろん、免許を取得してからも大なり小なりトラブルはあった。初心者ゆえ「擦ったらどうしよう」と不安な気持ちで運転するので、いつも子どもは大泣き。泣いている子どもを外に出そうとドアを開けていたら、もたついてしまい、後ろから「邪魔!」とクラクションを鳴らされたり。車だからといって、社会が子連れに優しいわけではないこともよくわかった。

 でもやっぱり、あれだけ大変な思いをして免許を取ったのは私の財産だ。

「子育てをしながら頑張って免許を取った私はすごい!」
「クラクションを鳴らされても、ビクビクしなくて大丈夫!」

 と思うと、少しだけ運転にも自信が持てるようになった。

 そして今度、初めての運転免許証の更新を迎える。

「教習所通いは、自分を成長させてくれるいい機会だったのかもしれないな」

 チャイルドシートですやすや寝ている息子の顔をみると、自然とそう思えるようになった。(文=栗原みな)