広島は金本知憲(左)や前田智徳(右)ら名外野手を多く生み出した(c)朝日新聞社
広島は金本知憲(左)や前田智徳(右)ら名外野手を多く生み出した(c)朝日新聞社

 プロ野球の場合、一人のスター選手が誕生するとその後釜に苦労することが珍しくない。ヤクルトで言えば古田敦也という歴史に残る名捕手が引退した後にしばらく正捕手不在が続いた。しかしその一方でなぜか同じチームの同じポジションで長い空白の期間を置くことなく、名選手が登場するケースがあることも事実である。そんな鮮やかな系譜を描くチームのポジションを振り返ってみた。

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 このテーマでまず思い浮かんだのが西武のショートだ。その流れを生み出したのが現在チームの二軍監督を務める松井稼頭央になるだろう。高校時代は投手だったものの、抜群の運動能力が評価されてプロ入り後にショートに転向すると同時にスイッチヒッターにも挑戦。プロ入り直後は守備も打撃も確実性に乏しかったが、瞬く間に頭角を現し3年目にはショートのレギュラーに定着。最多安打2度、盗塁王3度など多くのタイトルを獲得し、2002年にはトリプルスリーも達成するなど球界を代表するショートとなった。また、ショートとしては歴代最長記録となる7年連続のベストナインも受賞している。

 そんな松井が2003年オフにメジャーに移籍した直後にレギュラーを獲得したのが中島宏之だ。松井と同様に高校時代は投手でショートに転向したのはプロ入り後。1年目には二軍でも全く結果を残せなかったが、2年目に二軍の主力となると、松井の抜けた4年目にはいきなり一軍で全試合に出場して打率.287、27本塁打、90打点、18盗塁という成績を残してみせた。その後も打てるショートとして6度の打率3割をマークし、4度のベストナインと3度のゴールデングラブ賞にも輝いている。

 中島がメジャー移籍を目指して退団した後の2013年から4年間はレギュラーが固定できないシーズンが続いたが、そこに救世主として登場したのが2016年のドラフト3位で入団した源田壮亮だ。社会人のトヨタ自動車では9番を打つことが多かったが、プロではしっかり振り切る打撃を身につけると、1年目からレギュラーに定着して新人王を獲得。ちなみに、ルーキーがショートとして全試合にフルイニング出場を果たしたのはプロ野球史上初のことである。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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一流選手が途切れない広島の外野陣