コロナ禍による“棚からぼた”のロングランでも、収益面で厳しいことは変わらないようだ。

 だが、中にはコロナ禍の逆風でもヒットにつながった映画がある。東映配給のホラー映画『犬鳴村』だ。前出の松竹の担当者が「東映さん良いなと思って見ていました」と口にするほど、同作はコロナの渦中でも好調だった。

『犬鳴村』は、2月7日に211館で上映がスタート。7月5日時点で興行収入が14億円を突破するヒット作となっている。

「ここまでのロングランになるとは、正直言って予想外でした」と東映の担当者は話す。

 他の多くの作品と同様に、『犬鳴村』の上映期間も当初は4週間程度を予定していた。だが、同作はコロナの逆風が厳しくなる前の2月14日時点で動員が30万人を超え、好調な「初速」を作れたため、公開終了予定だった3月5日からの延長が決まった。

 とはいえ、通常であれば「まずまずのヒット作」として、公開から1カ月半程度で終了するはずだった。だが、同作の“寿命”が尽きようとしていた時期は、図らずもコロナ禍の影響で新作の公開が見送られ始めた時期と重なった。

 これが追い風となり、上映館は公開7週目で約30館拡大し、公開8週目にはさらに70館増えて、約300館となった。

 同じ東映配給で、同水準の初速を出していた『狐狼の血』(公開8週目で約40館)と比較すると、犬鳴村は7倍以上もの差をつけている。

 その後、4月上旬に全国規模の緊急事態宣言の発令があり、映画館が営業自粛に追い込まれた影響で一桁台に減少したが、5月中旬の緊急事態宣言解除後は、すぐ100館以上に回復。立て続けに新作の公開が延期されたことで上映する作品がないため、一度『犬鳴村』の上映を終了していた映画館でも、同作が再び上映されるという異例のケースが相次いだ。

 結果的に、『犬鳴村』は23週超のロングランに(7月13日時点)。動員111万人、興行収入14億円を突破するヒット作となった。

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『犬鳴村』の続編の制作も決定