ただ、PVPやCVPは組織を蒸散してしまうので、TURPやHoLEPと違い、病理検査を受けることができない。前立腺がんとの鑑別をきちんとつけてから治療を受ける必要がある。

 前立腺の切除術では、どの手術法でも射精障害(逆行性射精)の合併症がゼロではない。TURP、PVPでは前立腺の一部を部分的に残すことができるので、射精機能をある程度残すことが可能な場合もある。

「若い世代での発症で、射精機能を残したい場合は、主治医とよく相談して、リスクの低い手術法を選択してください」(同)

 前立腺肥大症は患部がデリケートな部分であるため、受診や治療をためらうケースも少なくない。

「たとえ痛くなっても、痛み止めを適切に使って痛みをコントロールします。そのほうが痛みを我慢するよりも回復が早いこともわかっています。安心して治療を受けてください」(安部医師)

 両医師ともに、手術は、現在の症状の改善に加えて、先を見越して選択してほしいと言う。10年後、20年後に、寝たきりや認知症もなく過ごしているという保証はない。

「尿は最期のときまでつくられ続けます。排尿できないと管を入れることになり、認知症などではその状態を維持することが難しくなります。手術のタイミングを決めるときには、将来のことも考えて、適切な選択をしてください」(同)

(文・別所文)

≪取材協力≫
NTT東日本関東病院 泌尿器科医長 前立腺センター長 安部光洋医師
長久保病院 理事長 桑原勝孝医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より