伊豆急行「THE ROYAL EXPRESS」の出発式でテープカットをする水戸岡鋭治氏(C)朝日新聞社
伊豆急行「THE ROYAL EXPRESS」の出発式でテープカットをする水戸岡鋭治氏(C)朝日新聞社
「THE ROYAL EXPRESS」の8号車に設けられたライブラリー。書斎の雰囲気を醸し出す(C)朝日新聞社
「THE ROYAL EXPRESS」の8号車に設けられたライブラリー。書斎の雰囲気を醸し出す(C)朝日新聞社
博多駅で出発を待つ787系「有明」(左)と885系「かもめ」(右)(C)朝日新聞社
博多駅で出発を待つ787系「有明」(左)と885系「かもめ」(右)(C)朝日新聞社
水戸岡鋭治氏の代表作といえるJR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」のラウンジカー(C)朝日新聞社
水戸岡鋭治氏の代表作といえるJR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」のラウンジカー(C)朝日新聞社

 今や鉄道デザイナーの第一人者として、レールファン以外にも広く知られている水戸岡鋭治(みとおか・えいじ)氏。JR九州の新幹線やクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」が有名だが、それまでにも多くの特急形車両を手掛けてきた。JR九州や岡山電気軌道の車両が有名だが、ついに北海道を水戸岡デザインの車両が走る日が来た。

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■鉄道デザイナーの原点は「ホテル海の中道」

 水戸岡氏が鉄道業界に進出するきっかけとなったのは、バブル景気真っただ中の1987年。JR九州香椎線沿線に建設された「ホテル海の中道」のオープニングパーティーで、JR九州初代社長の石井幸孝氏と出会ったことが始まりだった。当時、水戸岡氏はイラストレーターという立場で、おもにマンションや商業施設の完成図を描いていた。知人に「デザイナーの仕事がしたい」と打ち明けたところ、ホテル海の中道のアートディレクションに推薦してくれた。これがデザイナーとしての最初の仕事となったのである。

 オープニングパーティーの数日後、香椎線にジョイフルトレインの導入が決まり、JR九州は水戸岡氏にデザインを依頼した。それが1988年にキハ58系急行形気動車の改造により生まれ変わった「アクアエクスプレス」だ。今までの国鉄車両にはなかった柔和な前面デザイン、ホワイトをベースとした明るいカラーリングは、“新生JR九州”を存分にアピールした。

 1990年には485系特急形電車を「RED EXPRESS」と称し、JR九州のコーポレートカラーを用いて真っ赤に塗り替える大胆なデザインも話題となった。

■水戸岡氏の知名度を高めた787系「つばめ」

 1992年、戦前・戦後と国鉄を象徴する存在だった特急「つばめ」の愛称が、JR九州により博多~西鹿児島(現・鹿児島中央)の列車として17年ぶりに復活することになった。その専用車両として開発されたのが787系特急形電車だ。

 1988年に登場した先輩の783系“ハイパーサルーン”が古い車両に映ってしまうほど、斬新で高級感があふれるデザインが鮮烈かつ衝撃を与えた。水戸岡氏のこだわりで設けたビュフェのほか、航空機と同様のハットラック式の荷棚、日本初の真空吸引式汚物処理装置(トイレ内の悪臭を解消)、一部トイレを男女別に分けるなど、鉄道車両の概念をも変えた車両となった。

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高い評価を受け各賞を受賞