■後遺症に磁気刺激回復の可能性も

 近年では、発症から年数が経っていても、後遺症の回復が見込める方法がいくつか出てきている。その一つが経頭蓋磁気刺激だ。これは磁気刺激を利用して脳の機能を高める方法で、東京慈恵会医科大学を中心に、日本スティミュレーションセラピー学会からNEURO®という資格が付与された全国14カ所(2020年2月現在)の病院でおこなわれている。

 リハビリ治療としておこなわれるが適応基準があり、誰でも受けられるわけではない。また、磁気刺激と集中的なリハビリ(作業療法)を組み合わせておこなうため、2週間程度の入院が必要だ。

「まずは回復期に質の高い、十分な量のリハビリをおこなうことが第一です。その上で、生活期になったら次の方法として磁気刺激があるということですね。比較的軽い麻痺や失語症では、発症から数年~10年程度を経ても効果が見込める場合があります」(安保医師)

 またボツリヌス療法は、筋肉にボツリヌス毒素を注射して筋緊張を和らげ、その間に動かす訓練をする方法だ。注射の効果は3~4カ月で切れるが、注射と訓練を繰り返すことで緊張がだんだんと軽減されていく場合もある。10年に保険適用されたが安価ではないので、高額療養費制度や身体障害者に対する医療費助成制度の活用も考えたい。

(文・梶葉子)

≪取材協力≫
原宿リハビリテーション病院 筆頭副院長 稲川利光医師
東京慈恵会医科大学病院 リハビリテーション科 診療部長/教授 安保雅博医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より