■回復期リハビリは専門病棟で綿密に

 後遺症の回復・軽減や社会復帰をめざすには、早い時期からのリハビリが不可欠だ。リハビリ専門の医師のほか、身体機能は理学療法士や作業療法士、言葉や嚥下などの機能は言語聴覚士や歯科衛生士、さらに看護師、栄養士、薬剤師、MSW(医療ソーシャルワーカー)などが連携しておこなう。

 リハビリには、急性期、回復期、生活期という三つの段階がある。

 急性期のリハビリは発症時に入院した病院でおこなわれ、発症後2週間~1カ月程度が目安だ。状態が安定したらなるべく早く、48時間以内に開始されるのが望ましいとされる。からだを起こす、座る、立つ、車椅子に移るなど身体機能の回復訓練のほか、嚥下や言葉の訓練も段階的におこなう。

 発症後1カ月~6カ月は回復期と呼ばれ、回復期リハビリテーション病院(病棟)で集中的なリハビリがおこなわれる。自立歩行、トイレや入浴など日常生活に必要な動作、調理や掃除、バスに乗るなど社会生活に必要な活動、また失語症を含む高次脳機能障害に対する訓練もおこなう。東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科診療部長の安保雅博医師は言う。

「回復期に適切なリハビリを受けることで機能の回復が見込めます。とても大切な時期なので、その人に合った内容での十分な量のリハビリを、きちんとしてくれる病院を選ぶことも非常に重要です」

 脳梗塞の場合、健康保険では病院でおこなうリハビリについて発症後最大180日までとされているため、6カ月以降は回復具合により自宅や施設で、通所・訪問のリハビリなども活用しながら暮らす生活期となる。

「障害が残っても、生活の環境を整えることで活動が広がります。麻痺があるから、歩けないからと縮こまるのではなく、介護保険や家族・友人など、いろいろなものや人々の協力を得て、自分なりの生活をする方法を考え、前に進んでほしいと思います」(稲川医師)

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