また、レギュラー獲得については選手だけの問題というわけではない。到達した選手の中で最も時間のかかった大田は、毎年のように他球団の主力選手が入団してくる巨人の中で出場機会に恵まれず、結局開花したのはトレードで日本ハムに移籍した後だった。また7年を要した高橋周平についても、一軍出場は早かったにもかかわらず、首脳陣が抜擢しきれなかったという印象が強い。

 ただ大田や高橋周平の例はあるものの、全体的に見ると以前と比べて抜擢は早くなっているように見えるのもまた確かだ。ヤクルトは川上が全く戦力にならなかったという例はあるものの、山田と村上については早くから抜擢しており、山田は3年目に99安打を放ち4年目には193安打、29本塁打と大ブレイク。村上にいたっては2年目で36本塁打96打点という見事な数字を残している。

 また、プロとアマチュアの差が一番大きいと言われるキャッチャーでも、森が3年目にレギュラーに定着している。今年はここまで二軍暮らしが続いているが、小園もプロ入り一年目からショートという難しいポジションで一軍である程度結果を残してみせた。少し前までは、高校生であれば3年から5年は二軍で鍛えてという発想だったが、徐々にその考え方も変わってきていると言えるだろう。

 昨年大ブレイクした村上は今シーズンも開幕から4番を打ち続け、ここまで順調に結果を残している。また岡本も巨人の4番打者としての風格が出てきた印象だ。冒頭で取り上げた石川と森敬斗、また2年目を迎えている根尾、藤原、小園、太田の4人についても、岡本や村上のように早くからチームを背負って立つ存在へと成長してくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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