約1時間の観測で、横持ちしていた人は計43人。うち、真横に持っていた人は6人だった。大半が男性(女性は7人)で、30~50代のビジネスマンがカバンと一緒に傘を横持ちしている姿が目立った。

 後方の人は自分の体に当たらないよう、わざと距離を取って避けるようにして歩いていた。たしかに、後ろに子どもがいるとちょうど傘の先が目の位置にあたり、横持ちしている人が不用意に腕を振ったら刺さってしまう危険もある。時おり、点字ブロックに沿って歩く視覚障害の人の姿も見られたが、もし傘にぶつかれば転倒してしまうおそれもある。

 はたして、実際に横持ちをしている人は、そこまでの危険を認識しているのだろうか。声をかけて聞いてみた。

 横持ちをしていた50代のビジネスマン風の男性に聞くと、少し困ったような表情を浮かべてこう答えた。

「気づいたらしているときがある。なんとなくだから、理由を聞かれても困る」

 横持ちは、いつもしているわけではないという。

「気分の良いときにしているような気がする。雨が上がって、心が開放的になっているのかもしれないね」

 これまで、横持ちは危険だと思ったことはなかったと語る。

「言われてみれば危ない。持ち方に大したこだわりはないから、気を付けようと思う」

 傘を斜めにして歩いていた50代の主婦も「いつの間にか、この持ち方になっていた」と答えた。

「つえのようにして歩くと、底が削れてしまうからだと思う。人が密集しているときは、角度は調節しているはず」

 傘をかばんに乗せた状態で、真横にして歩いていた40代の会社員男性は、

「傘が乾いているときはそうしている。かばんにはさんでいれば、おさまりがいい。それに、縦に持つよりも、地面にぶつからないので歩きやすい」

 危険性について指摘すると、

「傘の持ち方なんて考えたこともなかった。自分も子どもがいるので、今後は気を付けます」

 と言って足早に去っていった。

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重症を負わせたら5000万円以上の賠償金