たしかにプロの世界は「結果がすべて」ではある。最近では『ビッグマウス』発言をしようものなら、SNSを中心にネットで袋叩きにあってしまうような時代にもなった。

 しかし、競争力の激しい日本の野球界でプロになるような選手は生まれ持った才能に加え、そこにたどり着くまでに相当な努力を重ねてきたのは間違いない。そんな選ばれし人たちなのだから、選手としての野望や自信を大いに語るのは「アリ」なのではないか。

 かつてオリックスに在籍した川口知哉は、京都・平安高時代に「完全試合を達成します」と宣言して注目を浴びた。

 入団時には「背番号は投手なので10番台が良い。僕をいつから1軍で使うのか、監督に聞いてみたい」などとも発言した。

 97年ドラフト1位指名された甲子園準優勝左腕は、プロ通算9試合登板0勝でユニフォームを脱いだ。成績だけみれば期待外れだったが、今でも記憶に残り話題となることもよくある。『ビッグマウス』には自身への重圧を高め、批判されるリスクも伴う。無理にする必要ももちろんない。だが、注目を浴び、野球界を盛り上げるという意味では、自然に発せられる『ビッグマウス』はむしろ歓迎すべきではないか。

 そして今年、またおもしろい若者がプロの世界に入ってきた。

「新人王を獲る。本塁打は30本くらい」

 中日のドラフト1位の石川昂弥(東邦高)が入団時に語った。これくらいの威勢があった方がおもしろい。キャンプから「次世代のミスタードラゴンズ」とまで言われる逸材。今後カベにぶつかることもあり、批判する人も出てくるだろう。しかしそれを打ち破る姿に、多くのファンは惹きつけられる。

 新型コロナウイルス禍など、先行き不安だらけの世の中。ストレスを抱えている人も多い。目立つ人々に対する不平不満をぶつける様子がいたるところで見受けられるもの事実だ。

「叩かれても無視されても、見返すその日まで」

 AKB48に『アンチ』という楽曲がある。推しメンの数で生き残れるかどうかが決まる熾烈な世界を歌っている。まさに言い得て妙、スポーツ界も違いはない。

 オコエや斎藤など、尖った選手たちには『アンチ』を大きなパワーに変えて見返して欲しい。そしてファンたちも選手が発する『ビッグマウス』には「できるものならやってみろ!」と余裕を持って楽しむスタンスこそが、よりスポーツ界を盛り上げるのではないか。