■20年後に約8割が認知症を発症する

 パーキンソン病の人を20年間追跡した海外の調査では、発症から20年後に約8割が認知症を発症していた。

 パーキンソン病の症状は、認知症の一つであるレビー小体型認知症でも出現する。両者の関係は深く、どちらも「レビー小体病」と位置づけられている。

 パーキンソン病の人のドパミンが不足するのは、神経細胞の中に「αシヌクレイン」というタンパク質が蓄積する過程で神経細胞が死んでしまうことが原因と考えられる。生き残った神経細胞には「αシヌクレイン」の塊の「レビー小体」が認められる。パーキンソン病の人はレビー小体が中脳に出現するが、進行すると、判断や記憶、知覚や思考に関わる大脳皮質にまで広がり、認知症を伴うようになる。

 一方、レビー小体型認知症の人は、レビー小体が最初から大脳皮質にまで広がっている。つまり進行したパーキンソン病とレビー小体型認知症の病態は、ほぼ同じだと考えられている。

「パーキンソン病を発症して1年以内に認知機能の低下がみられたらレビー小体型認知症、それ以降であれば認知症を伴うパーキンソン病と判断するのが一般的です」(織茂医師)

 認知症を伴うパーキンソン病とレビー小体型認知症の治療は、基本的には同じだ。パーキンソン症状を治療しつつ、認知症の治療薬も使用する。

「からだをうまく動かせないと、転倒して寝たきりになり認知症を進行させることになります。このため、運動症状を治療しながら、認知機能も低下させないことが重要です。ただし、パーキンソン病の治療薬の中には、認知機能の低下を引き起こす薬もあるので、より注意して薬を選択することが必要です」(同)

 なぜレビー小体がたまるのか、その原因は明らかになっていない。レビー小体をためないようにすることが、パーキンソン病やレビー小体型認知症の根本的な治療につながると考えられていて、現在研究が進められている。

(文・中寺暁子)

≪取材協力≫
関東中央病院 脳神経内科統括部長 織茂智之医師
順天堂大学順天堂医院 脳神経内科准教授 大山彦光医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より