リスクを軽減しなければならないのは、感染症だけではない。梅雨明け後は、気温が一気に上昇し、選手たちは気温30度以上の高温多湿のビーチで練習に取り組む。熱中症によるパフォーマンス低下および体調不良は、選手たちにとっては死活問題。試合後に熱中症で倒れた経験を持つ二見は、「一度そういう経験してから、しばしば頭痛が起きてしんどくなることもありました。それ以来、予防には気を使っています」と語る。

 ビーチバレーボールNTCでは、東京オリンピックに向けて国立スポーツ科学センターとともに暑熱対策の研究を重ねてきた。プレクーリングとして深部体温を下げるシャーベット状の飲料や、練習後のクーリングケアとしてアイスバスを実践。今後も、ミストファン(送風機)やアイスベストを導入し、パフォーマンス向上を図っていく方針を掲げている。しかし、今年はその対策にもコロナウイルスが付きまとう。高橋氏は言う。

「選手が共用で使うアイスバスは、水道水での感染リスクが低いですが、プールで使用する塩素消毒液を入れて除菌しています。ただ、外で使うものなので見え方にも危惧しています。そういったジレンマもありますが、施設をマネジメントする側として、強化の足は止めることなく環境づくりに努めていきたいと思っています」

 現在、ビーチバレーボール界は5月から開幕予定だった「ジャパンビーチバレーボールツアー」は今年9月に開幕予定(スケジュールは未発表)。オリンピック予選については、まだ詳細は決定していない。未だ目標設定ができない状況下だが、二見・長谷川組に現在のモチベーションを聞いた。

「オリンピックが延期になり時間ができたことで、もう一度世界のチームと戦えるチームづくりを念頭において、身体づくりだったりフォームの改善だったり、細かい所を追求しています。そして、その先にオリンピックがある。大会の開催は未知数だけれど、今はたくさんやることがあるので、1日があっという間。自分たちがコントロールできないことに対して考えている時間もないですし、とても充実していると思います」

「見えない敵」と戦う初めての夏。ビーチバレーボールはその歩みを止めず、屋外スポーツにおいてのニューノーマル定着を目指す。(文・吉田亜衣)

●吉田亜衣/1976年生まれ。埼玉県出身。ビーチバレーボールスタイル編集長、ライター。バレーボール専門誌の編集 (1998年~2007年)を経て、2009年に日本で唯一のビーチバレーボール専門誌「ビーチバレーボールスタイル」を創刊。オリンピック、世界選手権を始め、ビーチバレーボールのトップシーンを取材し続け、国内ではジュニアから一般の現場まで足を運ぶ。また、公益財団法人日本バレーボール協会のオフィシャルサイト、プログラム、日本ビーチ文化振興協会発行の「はだし文化新聞」などの制作にもかかわっている。