若手捕手が育つには経験豊富な捕手が近くに現役選手としていることも重要。広島には大べテラン石原慶幸がいて、会沢翼が日本を代表するまでに成長を果たした。ソフトバンクでは高谷裕亮の側で、甲斐拓也がレベルアップを成し遂げた。

「現在の阪神には経験豊富な捕手がいない。かつて在籍した城島健司は梅野と入れ違い。藤井彰人とは2年間しか共にプレーできなかった。現役選手として、もっと長い間同じ立場でいれば良かったのでしょうが。やはり監督、コーチとして接するのでは、距離感もできてしまう」(捕手出身の球界OB)

 阪神在籍はメジャー経験もある城島が10~12年。大阪近鉄、楽天にいた『男前』こと藤井は11~15年。阪神には名捕手2人がいただけに、在籍タイミングのズレが悔やまれる。

 巨人には現二軍監督・阿部慎之助の存在があったと巨人担当記者は語る。

「現役晩年は一塁手や代打専門だったが、共に同じグラウンドに立った経験は大きい。阿部は兄貴分的性格で、食事などグラウンド外でも積極的に交流を図る。捕手として、プロとして、若手選手にとって得るものは大きかったはず」

 小林は6年間、大城は2年間だが阿部の現役時代を知っている。捕手が育つ環境を見ると、若干だが巨人有利に見える。

「日本一になります」

 矢野監督以下、ほとんどの選手が宣言した言葉が虚しくなる惨状だ。昨年終盤の強さは幻だったのか。

 まだシーズン序盤とはいえ、通常よりも短いシーズン。流れを変えることができる交流戦も開催されない。早急にチーム立て直しを図らなければ取り返しのつかないことになる。

 梅野が正捕手であることには誰も異存はない。だからこそ打つだけでなく、守りの柱『配球』で投手を牽引することが求められる。日本一の捕手となるための梅野自身の試練。これは同時に今季の阪神を左右する大案件だ。