「ちょうど2000年頃にM-1のお笑いブームを経て、テレビで次々とネタ番組が放映されはじめました。そこに渋谷系漫才としてM-1の決勝進出したトータルテンボスあたりが昨今の流れの源流なのかなと思いますね。トータルテンボスは『半端ねぇ~』『〇〇つかまつるなよ』など、いかにもな若者言葉をディフォルメにしてネタにしていた。本人たちのパーソナリティもあり、うまく笑いに変えていました」(同)

 お笑い評論家のラリー遠田氏はチャラ芸人が生まれた背景についてこう解説する。

「そもそもチャラいという概念が生まれたのは、1990年代後半の『ギャル男』ブームの頃でしょう。この時期に『egg』『Cawaii!!』などのギャル雑誌が創刊され、若い女性の間でギャル文化が花開きました。それに続くような形で男性版が誕生したのです。同じく90年代に全国的なスターになったダウンタウンの松本人志は、ストイックに笑いの道を貫く求道者のように思われていました。頭を丸坊主にしたことで、ますますそのイメージは強まりました。そんな松本の影響で、お笑い界では長い間、一心不乱にお笑いだけに向き合うことが正しい芸人のあり方だと思われていました。その後、チャラい芸人が出てくるようになったのは、この風潮の反動ではないかと思います。お笑い界の空気に逆らってあえてチャラチャラした言動をすることが革新的に見えたのです」

■狩野英孝やぺこぱも元々チャラ芸人

 以降、チャラ芸をネタにする芸人が多数出現。パラパラをしながらネタをする慶や、「オシャレが止まらねぇ~!」というネタで有名になったサカイストのほか、狩野英孝も元はホストキャラでやっていた。お笑いトリオ・パンサーの菅良太郎(38)も最近、昔ハマったパラパラを披露し、動画が話題となっている。第7世代で言えば、お笑いコンビ・きつねは、パリピ的な音楽で「ふぉー!」と絶叫するネタで人気を博している。また、大ブレークしているぺこぱも、売れるまでさまざまなキャラを試行錯誤してきており、一時はチャラ芸に手を出していた。

 さまざまな芸人がチャラ芸を売りにしているが、EXITのように成功するポイントはどこにあるのか。

「ノリの軽さだけでなく、キーワードや引用する言葉の選び方で違いが出ます。若者カルチャーの突飛さを笑いに変えるだけだとうまくいかない。それから、ルックスが3枚目というのもポイントかもしれません。ブサイクがチャラいことをやっているっていうパターンはウケます。りんたろー。さんは、兼近さんの横にいてイケメンっぽく装っているけど『実はブスじゃね?』というネタに落とし込んでいます。最後はファッションに違和感がないかどうか。兼近さんはちゃんとファッションでもチャラさをうまく体現している。こうした要素を2人で補完しあっているからこそ、EXITは成功したんだと思います」(民放バラエティ制作スタッフ)

 チャラい芸風で若手芸人の頂点に立ったEXIT。今後、中堅に育っていくにつれ、その芸を進化させるか楽しみだ。(今市新之助)