生検によって、がん化したリンパ球はどの細胞の、どの段階でできたのか、さらには、腫瘍組織は袋(ろ胞)状の構造をもつ「ろ胞性」なのか、もたない「びまん性」なのかといった形態分類も可能になる。これらに染色体や遺伝子の異常の有無なども加えて、最終的に70以上の疾患単位があるリンパ腫のWHO分類による診断を進めると、リンパ腫の進行の速さや症状の強さを示す「悪性度」が明らかになる。

■「悪性度」は3段階 治療法は大きく違う

 悪性度は、年単位でゆっくり進む低悪性度、週~月単位で進行する中悪性度、日~週単位で急速に進む高悪性度の3段階に大きくくくられる。代表的な低悪性度のろ胞性リンパ腫は、日本人の悪性リンパ腫の約25%で、2番目に多い。

「リンパ腫による症状がなく病変部の大きさにも問題がなければ、無治療で経過観察することも多いです。進行がゆっくりのため、また、奏効する抗がん薬、分子標的薬療法などは多くあるものの根治は困難なため、診断後すぐに治療を始めても、病状に進行があってから始めても、最終的な治療成績に差がないという比較臨床試験の結果があるからです」(同)

 これに対して、日本人の悪性リンパ腫で最も多く、全体の約30%を占めるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は中悪性度である。

「治療しないと週単位で悪化し、その場所で大きくなったり、転移したりする恐れがあります。ただし、適切な薬物治療などで、約6割の患者さんは、再発することもなく“治る”ことが期待できます」(伊豆津医師)

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(ライター・近藤昭彦)

<取材した医師>
国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科科長 伊豆津宏二医師
埼玉医科大学国際医療センター造血器腫瘍科教授 塚崎邦弘医師

週刊朝日  2020年7月3日号