(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)

 甲状腺機能低下症は、甲状腺機能が低下することでむくみやだるさといった症状が出る。40歳代以上の女性に多くみられるが、20代後半から症状がみられることも。しっかりと治療すれば問題なく生活できる。どんな治療をすればいいのだろうか。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、専門医に取材した。

 甲状腺の検査はどんなときに受けるべきだろうか。伊藤病院内科の鈴木美穂医師はこう話す。

「甲状腺はのどぼとけと鎖骨のあいだにあり、女性はその位置が男性よりも少し上にあるため、少しの腫れでも気づきやすい。甲状腺の腫れに気づいたり、健診で指摘されたりしたら、甲状腺の検査を受けましょう」

 医師は問診で患者から自覚症状などを詳しく聞いてから、首回りを触って甲状腺の腫れやしこりがないか調べる。昭和大学横浜市北部病院甲状腺センター長の福成信博医師はこう話す。

「甲状腺機能低下症の症状は個人差が大きく、首が腫れずに甲状腺が小さく萎縮する人もいます」

 甲状腺の状態を詳しく調べるためには、血液検査と超音波検査をおこなう。血液検査では血液中の甲状腺ホルモンの量や特有の自己抗体の有無を調べ、甲状腺の働きぐあいをみる。

 血液検査で調べるホルモンは、FT3やFT4という遊離型甲状腺ホルモンとTSHという甲状腺刺激ホルモンだ。これらの濃度を測定する。FT3とFT4の値は甲状腺機能の状態を示す指標になる。TSH値は甲状腺ホルモン分泌に連動して下垂体から分泌されるホルモンのため、甲状腺ホルモン分泌の増減がわかる。
「TSH値の基準値は0・4~4・0μIU/mL。値が低ければ甲状腺が働きすぎていて、高ければあまり働いていないことを示します。甲状腺機能が低下している場合、TSH値は4・0μIU/mLを超えることが多い。TSH値は微細なホルモン変動にも連動しやすく、甲状腺の働きぐあいをみやすい」(福成医師)

 首の腫れやしこりがみられる場合には超音波検査も実施され、甲状腺の形や大きさを画像で診断する。

■ホルモン薬の服用は副作用少なく安全

 また、血液中の総コレステロール値も甲状腺ホルモンが増えると減り、減ると増える傾向がある。

「俗に言う悪玉コレステロールのLDLコレステロール値が高めの場合は甲状腺機能が低下している可能性があります」(鈴木医師)

 唯一の治療法は、「合成T4製剤」といわれる甲状腺ホルモン薬、一般名レボチロキシンナトリウム水和物(商品名チラーヂンS)の補充だ。錠剤を1日1回内服する。

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