■脳の病気やヨウ素の過剰摂取も原因に

 橋本病により甲状腺機能が低下する理由について、福成医師はこう説明する。

「橋本病は自己免疫疾患のひとつで、甲状腺の細胞に対する自己抗体が現れ、慢性的な炎症が続きます。その結果、甲状腺の腫れや、細胞の破壊が進み、進行すると甲状腺ホルモンの分泌が減少して甲状腺機能低下症が生じたりします」

 ただし、橋本病で首の腫れはみられても甲状腺機能は保たれている人もおり、かならずしも甲状腺機能低下症になるわけではない。

 鈴木医師は原因について、「脳の病気による場合もまれにある」と説明する。

「甲状腺の働きをコントロールしているのは脳の下垂体です。下垂体腫瘍や脳腫瘍などがあると下垂体の働きが低下し、甲状腺の機能低下を引き起こすこともあります」(鈴木医師)

 また、甲状腺の働きが過剰になるバセドウ病や甲状腺がんの治療で、甲状腺をすべて取り除く手術をした場合も甲状腺機能低下症と状況は同じになる。

 このほか、生まれつき甲状腺の形状や働きに問題がある、先天性の甲状腺機能低下症「クレチン症」がある。

「近年は新生児の足裏から少量の血液をとり、甲状腺や内分泌の病気を検査します。ほとんどのクレチン症は新生児期に見つかり、成長を促すためにも甲状腺ホルモンの補充による治療をすぐ開始します」(同)

 また、日本人特有の原因として、昆布などの海藻類に含まれるヨウ素の過剰摂取による甲状腺機能低下症も多いという。本来、ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料になる物質。ところが、過剰に摂取すると甲状腺ホルモン分泌の低下を引き起こす働きを持つ。

「習慣的に海産物を中心とした和食を食べる日本人は、通常の食生活でヨウ素が不足する心配はありません。むしろ過剰になりやすい。ヨウ素は海藻、とくに昆布に多く含まれています。昆布のつくだ煮や『おしゃぶり昆布』など昆布類を日常的に食べすぎるとヨウ素を摂りすぎてしまい、甲状腺機能低下症の原因になることがあります」(福成医師)

 ヨウ素の含まれるうがい薬も日常的に使用するとヨウ素過剰になる恐れがある。

「うがい薬の常用はお勧めしません。風邪のときだけなら問題ありません」(同)

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女性特有のリスクも