「スタンドから選手がよく見えるので驚いた。確かに試合中もグラウンドからお客さんの顔もよく見えた。ヤジったファンや、綺麗な女性など、ベンチ内で話題になることもあった」

 甲子園はマイナス面が指摘されることもある。

「席間が狭く移動が困難」。

「トイレの数が足りなく常に長蛇の列」。

 しかし改修を重ね使用し続けている球場であり、基本ベースは昔から変わらない。結局、やれることをやるしかない。

 新築した2009年からの新ヤンキー・スタジアムは細部まで観客のことが考慮されている。しかしリグレー・フィールドは柱で見えない座席があるなど、旧来のままの部分も残る。また一部球場内男子トイレの便器には区切りがなく、大きな長い洗面器型のものに並んで用を足しているほどだ。

 それらに比べれば改修後の甲子園の観戦環境は快適である。「歴史や先人の気持ちを共有できる」と考えれば、これもまたありか。

 そして『21世紀の大改修』時に大々的にアピールした、エコ活動の矛盾点にも注目したい。

 銀傘にソーラーパネルを設置。太陽光を取り入れるなど、環境保護を打ち出した。しかし夏場の試合、スタンド下通路ではクーラーが常時つけっぱなしで、天候によっては寒く感じるほどだ。

「エコなのかと疑問は多いですが、近年の酷暑下においては多くのファンが助かっている。選手同様、お客さんを守るのも大事」(阪神担当記者)

 過去にクーラーが設置してあれば、先人たちも喜んだであろう。

 他にも忘れてならないのが、凸型のスコアボード。34年に設置された2代目スコアボードから採用された独特の形状で、神奈川・保土ケ谷球場ものちに参考にしたと言われる。

「米国でもリグレーのものやボストンのフェンウェイ・パーク左翼側フェンス『グリーンモンスター』に埋め込まれたものは有名。スコアボード模型や写真など、グッズ販売もされている。日本の球場で有名なものは、甲子園だけではないでしょうか」(日米野球事情に詳しいスポーツライター)

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甲子園は世界に誇れる球場