プロレスの数ほど、名実況アナが誕生した。

 日テレ系では倉持隆夫と若林健治は外せない。倉持は数々の名実況を残しただけではなく、ザ・シークに襲撃され流血し救急車で搬送されたというエピソードも有名だ。また、若林がプロレス中継が縮小しつつある時期に「(放送枠)30分が悔しいんです!」「戻せ1時間枠!」と実況中に叫んだ言葉は、まさにファンの思いを代弁していた。

 他にもプロ野球実況でも有名な平川健太郎。「巨人戦でも、ここまで東京ドームは揺れません!!」と禁断の言葉を口にしたことが印象に残る。

 そして近年ブレークした変わり種は、高橋大輔。局アナ育ちが多い先達とは異なり、フリーとして実況をスタートしてステップアップ。現在はプロレス、格闘技の実況や司会進行のみならず、ジャンルを超越したマルチな活躍をみせる。人気アイドル・乃木坂46の選抜発表やライブでの司会進行を任され、プロ野球・巨人のスタジアムDJも務めている。

 過去の試合を見ると今でも熱い気持ちになれる。レスラーや試合内容の素晴らしさはもちろんだが、心を揺さぶる言葉がそこにあるからだ。

 列記した以外にも地上波、CS系など関係なく、素晴らしい実況アナは数えきれない。今後もニュータイプの実況アナがどんどん現れるだろう。どんな手法で語りかけてくれるのか楽しみである。試合とともに我々のハートをこれからも掴んで欲しい。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。