相澤晃も注目の逸材だ。1997年7月18日生まれの22歳。学法石川高から東洋大へ進学し、箱根駅伝では2年生で花の2区を任されると、4年次には三大駅伝すべてで区間新記録を樹立した男だ。

 ハーフマラソンでは2016年の上尾シティハーフマラソンでジュニア日本歴代3位の記録となる1時間2分5秒(歴代1位は大迫の1時間1分47秒)で走り、2019年の日本学生ハーフマラソン、さらにイタリア・ナポリで行われたユニバーシアード大会でも優勝した。大学卒業後は旭化成に入社。178センチの長身は大きなストライドを可能にし、今後、世界と戦う上でも武器になる。大迫の後継者として最も期待したいランナーだ。

 さらに、相澤の抜けた現在の大学長距離界にも、新たなスター候補生として田澤廉がいる。2000年11月11日生まれの19歳。青森山田高3年時にアジアジュニア選手権5000メートルで銀メダルを獲得すると、駒澤大に進学した昨年は1年生ながら素晴らしい走りを披露。11月の全日本大学駅伝では7区のエース区間で区間賞の快走を見せ、今年1月の箱根駅伝では3区で7人抜きの力走を見せた。

 身長は相澤よりも2センチ高い180センチを誇り、ダイナミックな走りが魅力だ。同じく2000年10月7日生まれの19歳、岸本大紀も期待できる。新潟・三条高から青山学院大へ進み、10月の出雲駅伝で2区区間賞をマークし、箱根駅伝では2区で6人抜きを見せて優勝に貢献した。今後の成長が楽しみな2人である。

 こうして「後継者候補」を挙げて行くと、日本の男子マラソン界の未来は明るいと言える。日本男子マラソン界の低迷が続いた頃は、箱根偏重の問題、箱根駅伝の弊害論が指摘されてきたが、近年は大学在学中からフルマラソンに挑戦し、卒業後も活躍するランナーが増加。大迫を筆頭に、箱根路を彩った面々が東京五輪の代表枠を争ったことで、より一層の盛り上がりを見せた。

 大事なのは、「大迫」と「大迫世代」を特例にしてはならないということ。ようやく軌道に乗り始めた「箱根から世界へ」の流れを継続・拡大することが、日本男子マラソン界のさらなる発展、そして1992年バルセロナ大会の森下広一を最後に遠ざかっている五輪メダル獲得へと繋がる。