逆にFA権を行使した年に成績を落としている選手も少なくない。過去10年では久保康友(2013年:阪神→DeNA)、涌井秀章(2013年:西武ロッテ)、成瀬善久(2014年:ロッテ→ヤクルト)小谷野栄一(2014年:日本ハムオリックス)、今江敏晃(2015年:ロッテ→楽天)、大野奨太(2017年:日本ハム→中日)などがその例と言える。また、久保や涌井については起用法について首脳陣と折り合わず、それが移籍の原因となったとも考えられる。捕手や完全なレギュラーではない野手の場合にも、出場機会を求めて移籍するというケースもあり、そのような選手は成績よりもポテンシャルを買われての契約とも言えるだろう。

 FAとなる年に成績がそれほど良くない理由としては、メジャーリーグと比べてFA権の取得までにかかる年月が長く、よほど早くレギュラーに定着した選手でなければ、いわゆる全盛期を過ぎているケースが多いということが大きいだろう。過去に移籍した選手を見ても、FAで移籍する2、3年前にキャリアハイの成績を残しているというケースが多い。一方でFAではなく、ポスティングシステムでメジャーに移籍した選手の例を見てみると少し状況は異なっている。

 こちらは選手の“旬”を逃したくないという気持ちと、球団もできるだけ高く選手を売りたいという思惑が一致していることからも、ピークに近い時期に移籍しているケースが多いのだ。過去10年では10人の選手がポスティングシステムでメジャーに移籍しているが、そのうち日本でプレーした最終年にキャリアハイを残した選手は以下の5人となっている。

西岡剛(2010年:ロッテ→ツインズ)
ダルビッシュ有(2011年:日本ハム→レンジャーズ)
田中将大(2013年:楽天→ヤンキース)
前田健太(2015年:広島→ドジャース
山口俊(2019年:巨人→ブルージェイズ)

 また、牧田和久(2017年:西武→パドレス)、菊池雄星(2018年:西武→マリナーズ)の二人もキャリアハイに近い成績を残しており、こうしてみるとFAで移籍した選手よりも高確率で結果を残していることがよく分かるだろう。日本で圧倒的な成績を残せないとメジャー契約は難しいということは当然あるが、それに向けて選手のモチベーションが高かったという要因も少なからずあったのではないだろうか。

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メジャー移籍を目指す選手の成績に注目