FAでの国内移籍とポスティングでのメジャー移籍を経験している山口俊 (c)朝日新聞社
FAでの国内移籍とポスティングでのメジャー移籍を経験している山口俊 (c)朝日新聞社

 以前ほど大型トレードが行われることが少なくなったプロ野球界において、主力選手の移籍といえばフリーエージェント(以下FA)権を行使してのものが大半となっている。FA権を行使した選手は他球団からの条件を聞くことが可能になり、言ってみれば自分を高く売る最大のチャンスとも言えるのだ。

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 メジャーリーグでは通算3166安打を放ったエイドリアン・ベルトレ(レンジャーズなど)がFAとなる年に好成績を残し、2度にわたり大型契約を勝ち取っている。果たしてNPBでもFA権を行使したシーズンで好成績を残した選手はどの程度いたのか。検証してみたいと思う。

 2010年以降にFA権を行使して国内の他球団に移籍したケースは49例で48人(鶴岡慎也が二度FAで移籍)、海外球団に移籍したケースは10人となっている。この中で移籍前年にキャリアハイ、もしくはそれに近い成績をマークした選手を調べたところ、以下の11人だった。

・国内移籍
小林宏之(2010年:ロッテ阪神
許銘傑(2011年:西武オリックス
糸井嘉男(2016年:オリックス→阪神)
山口俊(2016年:DeNA→巨人
野上亮磨(2017年:西武→巨人)
浅村栄斗(2018年:西武→楽天
丸佳浩(2018年:広島→巨人)
鈴木大地(2019年:ロッテ→楽天)
福田秀平(2019年:ソフトバンク→ロッテ)

・海外移籍
建山義紀(2010年:日本ハム→レンジャーズ)
和田毅(2011年:ソフトバンク→カブス)

 全体的に見ると少ない印象を持つのではないだろうか。更にこの中で許と和田については、2011年に導入された統一球によって、極端に投手有利となった影響も差し引く必要がある。昨年オフに移籍した鈴木も新設されたホームランテラスによって、本塁打数が伸ばせたという意味ではラッキーだったと言えるだろう。また、小林は移籍前年にリリーフとして結果を残したが過去には先発としての実績があり、山口はその逆のパターンである。そういう意味ではこの二人も特にFA権を取得する年が目立って好成績だったとは言えないだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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FA権取得の年だからといって成績は上がらない?