一方、歯周病が慢性腎臓病を悪化させる可能性については、歯周病原菌や炎症性サイトカインが血管に侵入することが原因ではないかと指摘されています。血液に侵入したこれらの物質が腎臓の血管に行きつき、病気で障害されている内皮細胞の悪化が進行しやすくなると考えられています。

 また、慢性腎臓病の人は糖尿病を抱えている人が多いのですが、歯周病の悪化によって血糖コントロールが不良になることも腎機能を低下させる原因になります。

 しかし、過度に恐れることはないでしょう。なぜなら歯周病の予防、治療により、こうした病気のリスクが減ることは、間違いないからです。「からだの健康のために歯周病対策を!」、これを意識しながら口腔ケアに取り組んでいただきたいと思います。

※『続・日本人はこうして歯を失っていく』より

≪著者紹介≫
日本歯周病学会
1958年設立の学術団体。会員総数は11,739名(2020年3月)。会員は大学の歯周病学関連の臨床・基礎講座および開業医、歯科衛生士が主である。厚労省の承認した専門医・認定医、認定歯科衛生士制度を設け、2004年度からはNPO法人として、より公益性の高い活動をめざしている。

日本臨床歯周病学会
1983年に「臨床歯周病談話会」としての発足。現在は、著名な歯周治療の臨床医をはじめ、大半の会員が臨床歯科医師、歯科衛生士からなるユニークな存在の学会。4,772名(2020年3月)の会員を擁し、学術研修会の開催や学会誌の発行、市民フォーラムの開催などの活動をおこない、アジアの臨床歯周病学をリードする。