「続・日本人はこうして歯を失っていく」より
「続・日本人はこうして歯を失っていく」より

 歯周病は糖尿病、心筋梗塞、認知症など、全身の健康とも大きくかかわっていることが分かってきています。そのキーワードは歯周病による「慢性炎症」と考えられています。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会による公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』では、歯周病が全身の健康に悪影響に及ぼすメカニズムを解説しています。ここでは「早産・低体重児出産」「骨粗鬆症」を抜粋して届けします。

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 日本産婦人科学会によれば、早産とは妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことをいいます。低体重児とは出生時の新生児の体重が2500g未満とされています。2015年度の人口動態調査では早産の発現率は全妊娠の5・6%、低体重児は9・5%です。このうち低体重児は増加傾向といわれています。

 医療の進歩により助かる赤ちゃんが増えたとはいえ、あまりに早い時期の出産は命の危険があります。また、低体重児も含め、合併症や感染症にかかる危険が指摘されています。

 歯周病はこうした早産、低体重児の危険因子であることが世界各国の調査により明らかになっています。

 正常な妊娠では妊娠末期になると母体や胎児の変化によって妊娠を維持する機能が後退し、プロスタグランディンやTNF‐αといった炎症性物質、オキシトシンなどのホルモンやタンパク分解酵素の産生が高まり、それによって子宮の出口がやわらかくなったり、子宮の収縮が起こったりします。これによって赤ちゃんが出やすくなり、出産に至ると考えられています。

 歯周病の人は、分娩にかかわる物質と共通している多くのものをその炎症部位から産生しており、細菌が持つ毒素やプロスタグランディン、また炎症性サイトカインといった炎症性物質として血行性に移行して子宮、胎盤に至ることで早産を引き起こす可能性があります。

 また、歯周病菌や炎症性物質が胎盤や羊水、臍帯に直接感染するというメカニズムもあるようです。早産の妊婦さんや早産・低体重児のリスクのある妊婦さんの羊水や胎盤組織から、P.g菌が検出されたことが報告されています。

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骨粗鬆症も歯周病と深いかかわりが