一方、遺伝子変異がない場合(陰性)の再発予防では、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(商品名:オプジーボ)、あるいはペムブロリズマブ(同:キイトルーダ)を用いる。遺伝子変異が陽性の場合にも用いられ、陰性のケースよりも選択肢が多いことになる。

 これらの治療で、20~30%の再発を抑えることができるという。

 BRAF阻害薬+MEK阻害薬は内服薬で、副作用として発熱、視力障害などがみられる。免疫チェックポイント阻害薬は点滴で、発熱、発疹、下痢、息切れなど、全身にさまざまな副作用があらわれることがある。そのため、慎重に管理しながら投薬される。

「再発例に対しても、同じ薬物療法をおこないますが、加えて2018年にニボルマブとイピリムマブ(同:ヤーボイ)という免疫チェックポイント阻害薬の併用が保険適用になりました。重症例に対する治療法は増えています」(藤澤医師)

 完全に切除するのが難しい場所にある場合や、リンパ節の転移巣などに放射線治療をおこなうこともある。

 都立駒込病院皮膚腫瘍科部長の吉野公二医師は次のように言う。

「分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の承認前は、ダカルバジンという抗がん剤しか治療薬はなく、5年生存率が10%未満でした。今は、転移のあるケースでも治療成績は格段に上がったといえるでしょう」

 メラノーマは転移がなければ、5年生存率が80~85%だ。やはり早期発見がカギになるといえる。

 なお、がんの手術に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

(ライター/別所 文)

<取材した医師>

筑波大学医学医療系皮膚科学准教授 藤澤康弘医師

がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科部長 吉野公二医師

週刊朝日  2020年6月26日号