■ 大きさよりも厚さで 転移リスクが決まる

 メラノーマでは大きさよりも厚さが問題になる。筑波大学医学医療系皮膚科学准教授の藤澤康弘医師はこう話す。

「厚さが4ミリを超えると、進行していると考えられ、リンパ節転移の可能性が50%以上になります。2~3ミリで20~30%でしょう」

 検査は問診、リンパ節の触診、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を用いたダーモスコピー検査、CT(コンピューター断層撮影)などがおこなわれる。

 また、リンパ節転移の有無を調べるために、センチネルリンパ節の生検(細胞を採って詳しく調べる検査)が実施される。センチネルリンパ節とは、リンパ流に乗ったがん細胞が最初にたどり着くリンパ節のことで、このリンパ節に転移がなければ、ほかのリンパ節の転移の可能性はほとんどない。そのため、まずセンチネルリンパ節を特定し生検する必要がある。

 通常、センチネルリンパ節生検は、がんの部分を切除する際に同時におこなわれる。色素あるいは放射性アイソトープを、病変近くに皮下注射してリンパ管に注入し、検知できる機器を用いてどのリンパ節にたどり着くか術中に追跡する。

 治療の基本は手術による原発巣の切除と、リンパ節転移がある場合は、そのリンパ節の切除だ。原発巣は、大きさや厚みに1~2センチ程度の余裕をもたせて切除する。切除部分が大きい場合には、太ももなどから皮膚を移植する皮膚再建もおこなわれる。

 リンパ節転移がある場合の術後に、画像検査などでがん細胞の存在が認められなければ、再発予防として薬物療法を1年間おこなうことが一つの選択肢になっている。

■ 重症例の治療の選択肢が増加

 薬剤の選択にはBRAFという遺伝子がかかわっている。BRAF遺伝子に変異があると、がん細胞の増殖が促進されることがわかっている。切除したメラノーマの組織を用いたBRAF遺伝子検査で変異が見つかった場合(陽性)は、この変異遺伝子の作用を抑えるBRAF阻害薬と、がんの細胞分裂にかかわるMEK遺伝子の作用を阻害するMEK阻害薬の併用が選択肢となる(いずれも分子標的薬)。日本人のメラノーマ患者の2~3割にBRAF遺伝子の変異があることがわかっている。

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治療成績が格段に上がった薬とは