ただ、犬、ドーベルマンは飼ってみたいと思ったね。飼い主に忠実で強いだろう。そう思ったのは俺が60歳を超えて衰えを感じ始めたときからだ。つまり強い用心棒がほしくなったんだな(笑)。ただね、おじいちゃんが犬に引っ張られて散歩しているのを見たときに「これがドーベルマンだったらヤバイな」と思って、少しテンパった俺もいる……。まあ、飼うのが実現するかはわからないけど、夢ではあるね。ただ今はマンション暮らしで、ドーベルマンを飼うならは一軒家じゃないとな。さすがに嫌だろう、マンションにドーベルマンがいたら(笑)。

 犬と言えば俺の相撲時代、当時絶好調だった横綱・大鵬関が後援者から犬をプレゼントされて飼おうとしたことがあった。ところが二所ノ関部屋は屋上にお稲荷さんをまつっていて、親方が「うちの鎮守様はキツネ、お稲荷さんだから、犬とは合わない。飼ってはダメだ」って言ってね、大鵬関もあきらめたんだ。今となってはわかるけど、当時15~16歳だった俺は「なんでこんなことにまでこだわるんだ。別に飼ってもいいだろう」と思ったね。親方は頑として許さなかったし、当時勢いのあった大鵬関もすんなり親方の言うことを聞いたもんだよ。

 師弟関係っていうのはやはりすごいもので、大鵬関も親方に反発したことは……、1回だけあったな。大鵬関が横綱になって上り調子のとき、稽古場に40~50人もファンが見学に来るんだ。当時は弟子がふがいない稽古をしていると、親方が竹刀で尻を叩いていて、それは横綱の大鵬関も例外ではなかった。そんな稽古が終わった後、大鵬関が親方のところに行って「親方、俺も横綱になったんですから、ファンの前で尻を叩くのはやめてください」と言ったんだよ。そしたら親方も「ああ、そうか。それもそうだな、わかった」って、それ以来竹刀で叩くのをやめた。親方にそんなことを言う大鵬関もすごいし、それを認める親方も懐が深い。まあ、小さかった部屋が大鵬関の活躍でビルに建て替えられたといのも多少はあったかもね……(笑)。

次のページ
馬には乗ってみたいけど、天龍源一郎は舐められるかも(笑)