もっとも、この段階になっても痛みを我慢できる人もいるようです。

 最重症の歯周病を放置した結果、歯のグラグラがひどくなり、あるとき、

「自然に歯が抜けました」

 と受診をしたり、

「グラグラしていて邪魔なんで、自分で抜いちゃいました」

 と、やってくる患者さんも少なからず、いるのです。

「こんなになるまで受診しなかったなんて、痛くなかったの?」

 と聞くのですが、「我慢ができた」と……。そのたびにびっくりしますが、痛みを感じにくいのは歯ぐきの血流が悪い、ヘビースモーカーの人に多いようですね。その都度、痛み止めを服用していたのかもしれませんが。

 一方で、初期の歯周病でも歯ぐきの症状に敏感で、ものすごく痛がってやってくる患者さんもいます。痛みは主観的なものですから、その感じ方には個人差もあるということでしょう。

 つまり、痛みで歯周病の病状を判断するのは難しいのです。

 だからこそ、症状がないときにも歯科医院に行き、歯周病の有無や進行度を診てもらうことが大事といえます。歯科に関しては症状があったら早めに受診をしてください。新型コロナウイルスの流行で、受診を心配する人がいますが、歯科医院はHIV、肝炎などあらゆるウイルスを持つ患者さんを普段から想定し、治療器具の滅菌を徹底し、感染予防に努めています。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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